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note.084 SIDE:G

 探索を再開して、迷路を進む。
 天地さんの先導で罠を避けていると、なるほど、罠師のLvが上がってきたのか、すごいなんとな〜くだけど、罠の大まかな位置はわかるようになってきた感覚があるね。

「あ、この辺危ないですかね」
「お、わかるようになってきたかね?」
「はい、まだなんとなくですけど……罠がある方向を向くと、なんだか熱気に当てられたみたいというか、肌がヒリヒリするような感覚が……」
「あー、わかるわかる」
「うむうむ、着実に成長しておるの、よきよき。んじゃまぁ、そろそろその感覚に従って自分で避けてみようか。読み違えて危ない時はちゃんと言うから、とりあえずチャレンジしてみー? やっぱり、教えられてよりは自力で避けた方が経験値の入りはいいからね」
「はい、やってみます」

 というわけで、ミスティスと二人で前に出て、今度は僕たちが先導するような形で罠を避けながらの探索に挑戦することにする。

「あ……」
「うん、あるね」
「えっとー、なんとな〜くこの辺にー……」
「こっちかな……」
「ってことは……」
「ここら辺、かな?」

 罠の感覚を感じ取ると、ミスティスと二人で別々の方向に進みながら感じられる方向の変化を確認して、二方向から大体のアタリをつけることで、大雑把ながら罠の位置を特定して避けていく。

「なるほど、悪くない方法だ。試しに、次から二人でそれっぽい位置指差してみるといんじゃね? 多分、ドンピシャで当てられたら一気にLv上がるぜ」
「だね〜、やってみよっ、マイス」
「うん」

 と提案されて、次の罠で早速試してみることにする。

「んー……」
「うん」
「せーの――」
「「ここっ!」」

 二人同時に指を差してみるも、

「ん〜ん、惜しい。はは、まぁさすがに一発とはいかんかー」

 さすがにまだちょっと精度が甘いみたいだね。
 でも、実際こうしているうちに、少しずつだけど肌がヒリヒリする「予感」を感じられる方向が狭く、より具体的になってきている感覚はあるね。
 もう何回かやれば、多分二人でピッタリ言い当てられるんじゃないかな。

 そうして歩いていると、次の敵が現れる。
 あれは……ホブゴブリン……いや、あの青い肌、ハイゴブリン!?

「げげっ、青いの!?」

 ミスティスも気付いて驚いたようで、二人して身構える。

「ハイゴブリンねぇ。ふむ、どしたん二人して?」
「一昨日来た時に、1Fであれのブーステッドに遭遇しまして……」
「や〜、まぁ、今のLvだし、アレは別にブーステッドじゃないし、平気だとは思うんだけどね〜……。一昨日結構な激戦だったから、つい……」
「な〜る。1F行く段階でブーステッドは確かに軽くビビるわ」

 とは言え、ミスティスの言う通り、あれは一昨日と違ってブーステッドMobではないし、今は僕たちのLvも上がっている。
 それに、ブーステッドではないからか、目も赤くないし、一昨日のような獣じみた雰囲気もなく、むしろ肌の色以外は普通のホブゴブリンといった風情だ。
 う〜ん……そう見ると、今なら実はそれほど恐れるような相手でもないのかな?

「――!」
「――! ――!」

 僕たちに気付いたハイゴブリンが何やら叫ぶと、通路の向こうから更に2匹が現れる。
 手に持っているのは、片手剣が2匹と、あれは……

「杖……?」
「お〜、マジシャンがいるねぇ」
「ま、普通のと同じなら言うほど大したことはしてこないっしょ」
「多分ね〜。とりまやってみよう」

 ミスティスが挑発を打ち鳴らして、戦闘開始だね。

「――。――!」

 杖持ちが早速何か唱えると、向かってきている片手剣2匹が何やら赤い靄みたいなものにうっすら包まれる。
 何かのバフみたいだね。

「さ、どれぐらいかなっと!」

 2匹の片手剣の、前にいる側にミスティスがすれ違いざまにバッシュで一度斬りつけて怯ませる。その隙に前側の1匹の右手をすり抜けると、その流れで後ろ側の方にウルヴズファングを叩き込む。
 となれば、僕が狙うべきは、怯んで隙だらけになった前側の1匹……!

「《フロストスパイク》!」

 後ろに抜けたミスティスを追おうとしつつも体勢を崩された前側の1匹は、側面からフロストスパイクの直撃をくらうことになって、遥か後ろ、杖持ちよりも更に奥まで弾き飛ばされていく。

「――……――!?」

 そのフロストスパイクの軌道がすぐ近くを掠めたことで、何やら詠唱しようとしていた杖持ちが驚いて、魔法を暴発させていた。
 おかげで勝手にダメージをくらってスタンしたみたいだから、しばらく杖持ちはほっといていいね。

 その間にもミスティスは、ウルヴズファングから更に追撃する形でピアシングスラストを発動して、剣でもう一突き。ほとんど成す術もなく剣持ちの片割れを倒してしまうと、動きを止めることなくメテオカッターを発動、跳躍からの一刀両断で目を回していた杖持ちも爆散させてしまう。

 その頃になってようやく吹っ飛ばされた剣持ちのもう1匹が戻ってきたけど、もう遅いよねぇ。

「てやーぃ!」

 ピアシングダイブを突き込みつつ、ミスティスが後方に抜けたところで、

「穿て、《ブレイズランス》」

 間髪入れずに僕のブレイズランスが刺さって、最後のハイゴブリンもフォトンの塵に消えていった。

「いえーい! 大したことなかったねー」
「だね」

 戻ってきたミスティスに応えてハイタッチを交わす。
 我ながら、このやり取りにももうすっかり慣れたものだね。

「やーっぱブーステッドじゃなきゃこんなもんか〜」
「だぁね。つっかブーステッドが別格なだけよ」

 天地さんが軽く肩をすくめる。
 なんと言うか、本当にただ青くなってLv相応になっただけのホブゴブリンって感じだったね。
 彼の言う通り、同じLv帯の同じMobでもブーステッドが別格なだけってことのようだ。

「ま、問題なさそーなのはわかったし、次進もー♪」

 とまぁ、探索続行だね。

 少し進むと、また罠の感覚……。

「これは……」
「うん、だ〜いたいわかってきたね」
「うん、これは多分……――」
「「ここっ!」だね!」

 二人同時に指差した場所は――

「あ、見えるようになった!?」
「うんうん、セーカイセーカ〜イ♪」

 ぴったり場所を当てられたおかげで罠師のLvが上がって、ようやくこの階層の罠も見えるようになったみたいだね。
 わかるようになってみれば、スイッチになっているレンガだけ、微妙に周りと材質?というか、色味が違うような、そんな感じだね。
 う〜ん……なんだか、ずっとわからずににらめっこし続けてた間違い探しがようやく見つかったような気分だね。すごくスッキリした。

「おめっとさ〜ん。ま、見たとここの階層の罠は全部このLvみたいだから、多分もう全部自分で見えるようになったんじゃないすかね」
「おめあり〜」
「ありがとうございます。ちょっと安心できました」
「だね〜、ようやくマッピングに集中できるよ」

 さて、罠も安全に見破れるようになったところで、ここからはまたミスティスを先頭に陣形を組み直して、先に進もう。


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