note.036 SIDE:G

 その後も、今度は逆に僕たちの戦い方をエイフェルさんたちに見せてあげたり、大人数パーティーの練習を兼ねてゴーレム相手に全員で共闘してみたり、

「あ……」
「へ? って、うわぁ……」
「あっぶなー……」
「隠す気ゼロですか……」

 ふと罠捜しのことを思い出して、なんとなくそれまで見ていなかった上を見上げたら、天上から棘が生えているという露骨な吊り天井トラップを発見して、エイフェルさんたち共々エクストラスキルの罠師を手に入れたり、なんて一幕もありつつ、順調に探索を続けていった。
 そうして進んだ先で――

「あっ、あれは……」
「おぉー、着いたねぇ、1F終点!」

 思わず少し小走り気味に駆け寄ってみれば、そこには下層へと続く薄暗い階段がぽっかりと口を開けていた。
 場所的には、少なくともこれがエリアの端っこということではなさそうだけど……。
 だいぶあやふやだけど、ここまで道を決めてきた僕の感覚が正しければ、多分ここは地上側のここへ降りてくる階段の入り口の真下とかじゃないかな?

「こ、これが……」

 なんて、仰々しくごくりと喉を鳴らすモレナさん。

「センパイたちは、下降りるんすか?」
「そのつもりだよー。モレナたちはどうするー? 別に、ついてくるならこのまま共闘ってことで全然オッケーだけど」
「う〜ん……お気持ちは嬉しいですけど、私たちは今日はここでレベリングにしておきます。いつまでも先輩たちに頼りきりってわけにもいかないですし、実は先輩たちに会う前に、私たちだけでゴーレムと戦ったんですけど、まだちょっと苦戦する感じでしたので……。2層に降りるのは、ここでもう少し実力をつけてからにしておきます」

 とのエイフェルさんの返答に、モレナさんと謡さんも同意見のようで、それぞれに頷く。

「そっかー。うんうん、そういうことならリョーカイだよー」
「ふむ、一緒に行けないのは少し残念ではあるが、自分たちの実力をきちんと見極めて進退の判断ができるというのも、いいパーティーの資質の一つだ。君たちならきっと、このエニルム程度はすぐに攻略できるようになるさ。今後も頑張るといい」
「はいっ! ありがとうございます!」
「じゃあじゃあ、フレンド登録ぐらいはしておこうよ!」
「えっ、はい! それは是非に! じゃ、じゃあ、いいですか?」
「オッケーオッケー♪」

 と、お互いフレンド登録を交わして、僕たちはそれぞれに別れることとなった。

「それじゃあ先輩、攻略、頑張ってください!」
「ありがとー♪ そっちもレベリングふぁいとだよ!」
「ありがとうございます! それじゃあ、また!」

 ミスティスと一緒にエイフェルさんたちに手を振って、僕らは2Fへと続く階段へと足を踏み入れた。

 2Fへの階段は……結構深いね。
 地上からのものと同じく薄暗い通路の中、途中2回折り返しつつ、どこまで降りるのかそろそろちょっと不安になりだした辺りでようやく出口が見えてくる。
 そうして、ようやく辿り着いた2Fのフロアは――

「わぁ……だいぶ雰囲気変わったね」
「だよねー、結構違うよねー」

 僕の率直な感想に、いつものようにうんうんと勝手に納得しているミスティス。

 どうやら、エリアの端っこ、ちょうど西側中央の壁面から出てきた形みたいだね。
 そっか、入り口から1回目の折り返しまでと比べて、折り返しから2回目の折り返しまでがだいぶ長く感じたけど、フロア中央から始まる階段を、フロア端から侵入する位置に繋げてあるからだったんだね。
 そして、両脇を見ると1F同様の迷路になっているみたいだけど、正面は明らかに他より広い、中央の空間まで続く一本道になっていて、中央の広間に見えるのは……ここからだとよく見えないけど、多分、地上のと同じピラミッド?かな?
 とにかく何か巨大な、別の建造物がすっぽりと収まっていた。
 明らかに、今立っているこの場所の1Fと同じぐらいの高さの天井には収まりそうな大きさではないから、中央の広間だけは、深く降りてきた分、もっと天井が高くなっているのかもしれない。

「すごいだろ? 初見だとやはり、1Fと比べて驚くものだよな」
「う、うん。正面のアレは何なの?」
「あのピラミッドはボス部屋さ。外周は見ての通り、1Fと似た迷路だけど、ここと同じ構造の通路が、あのピラミッドに向けて四方から伸びている構造になっているのと、迷路の中央にも、外周を真っ直ぐぐるっと一周する回廊が通っているから、基本は外周の迷路を探索しつつ、ボスに挑む時には回廊を探せばピラミッドまではすぐに辿り着ける、という寸法だ」
「な、なるほど」

 地下にこんな迷宮を作った上に、あんなピラミッドをまるごと一つ収めてしまうんだから、なんだかスケールがおっきいよねぇ。
 起源に関しては失伝したって話だけど、昔の人は本当に、何を思ってこんなものを作ったんだろうか……。
 まぁ、夢のない話をしちゃえば、もしかしたら世界観的にはそんな当時の目的とかなんて深いところまで設定してなくて、単に初心者が最初に来るダンジョンとしてのインパクトを狙ってデザインされただけ、とかかもだけど。

「ま、ボスは最後でいいとして、せっかく来たんだ、まだ時間の余裕もある。まずはしばらく迷路を回るか」
「サンセー♪」

 うん、まずは探索だね。
 確か、2FのMob配置は……ホブゴブリンは1Fの蛇ぐらいまで数を減らして、2Fで一番数が多いのはゴーレムだったはずだ。
 そして、2Fで新しく出てくる魔物が2種類。
 一つは、少しサイズを縮めたゴーレムの胴体部分――赤い核が石で囲まれただけの物体がふわふわと浮いて移動してくる、ゴーレムトルーパー。
 見た目通り、手足もなく、核も相変わらず剥き出しの、それほど強くもない魔物だけど、一気に倒しきれずに半端にHPを削ってしまうと、周囲のゴーレムを呼び寄せてしまうのが厄介な相手だ。
 もう一つは、たまに天井から降ってくるブルースライム。
 まぁ、ダンジョンにスライムはある意味定番の組み合わせだよね。
 こちらは、単にスライム森のグリーンスライムがちょっと強くなった上位種で、このダンジョンの固有種というわけでもなく、他のフィールドなんかでも見かけることができる、普通の魔物だ。
 天井からの奇襲にだけ注意してれば、今の僕たちなら苦戦はしないはずだね。

 さて、じゃあ、とりあえず探索を始めようか。


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