note.066 SIDE:G

「あ゛ー、きっつー! ブレッシング(ブレス)ないだけでなんであんな重いのツリガネ君!」

 銅鐸が倒れたのを確認して、ミスティスは心底疲れた様子で思いっきりその場で大の字に寝転ぶ。
 ……スカートの中とか見えちゃいそうだから、その格好でこっちに足を開いて寝ないで欲しいんだけど……当のミスティスはそこら辺特に気にした様子もないらしい。
 できるだけ下半身側は見ないようにしつつ、声をかけてあげることにする。

「あはは……お疲れ様、ミスティス」
「やー、やっぱLv適正ぐらいだと普通に重てぇよなぁ銅鐸ハンマー、ははっ。おつおつ」
「おつあり〜……」

 と、そのミスティスの足元側では恒例のフォトンクラスターが形になる。
 今回のMVPは……え、また僕!?

「おめとー」
「おめ〜」
「えっと、あ、ありがとう……それじゃあ、また僕でいいのかな」
「うんうん、遠慮はいらないよー」

 まぁ、ミスティスがそう言ってくれるので、遠慮なくもらっておくことにする。
 さて、今回は……ネックレス?

「……やっぱりこの顔なんだね……」
「あはは、まぁツリガネ君のドロップだからね〜」

 とりあえず上半身だけは起こしたミスティスが、僕の手元を見て笑う。
 出てきたのは案の定と言うべきか、謎顔レリーフが吊るされたネックレスだった。

「まぁでも見た目を気にしなきゃそのネックレスは銅鐸のドロップの中じゃ割とアタリだぜ。MAtkを%(パーセント)で上げてくれるからな。実数値で10、20上がったところでちょっとLv上がればすぐしょっぱい補正になっちゃうけど、そいつは割合上昇だから後々でも損がない」
「なるほど、長く使っていけそうですね」

 エニルムネックレス……確かに、Int+1はまぁ、おまけとして、MAtk+5%がアクセ枠で付けられるというのはかなり大きいね。
 これぐらいのネックレスなら服の中に入れちゃえばまぁ気にならないし、長く使っていけそうだね。

「さぁてぇ? んーで、我々の本題はこちらなわけだが」

 そう言って、天地さんが床に残されていた守護者の瞳を拾い上げる。

「それじゃ、お待ちかねの答え合わせタ〜イム♪」

 既に楽しみでしょうがないといったテンションで勢いよく立ち上がったミスティスは、集めたゴーレムの破片をストレージから取り出すと、僕に渡して、

「じゃあ、私こっち側に乗っけるから、マイスそっちよろしくね〜」
「あ、うん」

 いそいそと燭台の列の片側へ向かっていく。
 それじゃあまぁ、反対側の燭台に石を並べていこうか。

 銅鐸の出現演出の時には火が灯っていた燭台の上に、一つずつ石を置いていく。
 そうして、全ての燭台に石を置き終わると、

「っし……じゃ、いくぜ」

 祭壇の前に立った天地さんに向けて頷く。

「いざ!」

 祭壇に、守護者の瞳がはめ込まれる。
 と、突然、守護者の瞳がグリグリと回ったかと思えば、某カードゲーム王の三角パズルみたいな瞳の紋様を浮かび上がらせた。
 どうやら答え合わせは合ってたみたいだね。

「おっ、答えは正解ってことか?」

 後ろを振り向けば、まるで乗せた石を燃料にしたかのように燭台に再び火が灯されていき、火がついた順に、その燭台の足元から床の石レンガの継ぎ目を伝って、燭台が囲む通路の中央に刻まれた紋章刻印まで魔力の光が伸びていく。
 そうして、燭台の石が全て燃え尽きると同時に、魔力で完全に満たされた紋章刻印が起動する。

 が、魔法陣が光ったのは一瞬で、魔力の光は今度は逆に、周りの石レンガの継ぎ目に薄く広く広がっていく。
 魔力が広がりきると、全体が一度強く光って、光は消えた。
 すると今度は、ゴロゴロと音を立てて、紋章刻印の部分を中心に石レンガが出たり入ったり移動したりを複雑に繰り返しながら、床が開いていく。

「かっけぇー! このいかにもなギミックいいなぁ、浪漫だよねぇ」

 なんて天地さんが目をキラキラさせている間に床は完全に開いて、そこには更なる地下へと向かう階段が口を開けていた。
 本当に3Fが見つかっちゃったよ……。

「わぁ……」
「おぉ……おぉお〜〜〜! ……すごい……すごいすごい! やったよ天地〜! ホントに世紀の大発見だよ!」
「いえーあ! はっはははっ、マジでやったぞおい!」

 何故かいきなり僕の手を握って飛び上がっての大はしゃぎで喜んだミスティスが、天地さんとハイタッチを交わす。
 でも、この時ばかりは僕も、ミスティスに手を握られた気恥ずかしさよりも、目の前に現れた、文字通り前人未到の未知への興奮が勝ってしまっていた。
 正真正銘、僕たちが足を踏み入れる初めてのパーティーであろう、未知の領域……!
 この先に待つ「真の試練」とは一体なんだろうか。
 ここからこうして階段を覗くだけで、もうワクワクが止まらない。

「さてさてーっと」

 祭壇方向へと下っていく階段だったので、まずは降り口である反対側に回る。

「じゃあ、まずは降りてみっかー」
「「おー!」」

 早速、三人で階段を降りていく。
 僕たちが床面より下まで降りると、多分、ボス部屋をリセットするためだろうね、階段の入り口は元通り閉じられていき、それに対応するように、壁の両側に並ぶ謎顔レリーフの口の中の蝋燭に火が灯って辺りを照らしてくれる。
 とりあえず、下までは一直線みたいだね。
 特に何事もなく階段を下まで降りきると――

「おーん? あー、とー……りあえずはこれまでと一緒で迷路って感じか」
「でもなんか今までより道広いねぇ」
「うん」

 広がっていたのは迷路らしき道。
 どっちかというと、2Fよりは1Fに近い、ただ純粋な迷路って感じかな。
 ただ、ミスティスの言う通り、明らかに2Fまでよりも道幅が広がっている。
 どうやら階段はどこかの通路の側面に繋がっていたようで、目の前はすぐ壁で、左右に向かって道が伸びていた。

「どうするー? とりあえずセオリー通り、壁に右手つけて歩く?」
「やー、言うて今日これ帰ったらすぐ掲示板に流しちゃうつもりだし、どのみちうちらだけの今日1日で全域マッピングしきれるとも思っとらん。そーゆーめんどくさいのは情報だけ流せばあとで物好きがいくらでもやるっしょ。それよか、せっかくの冒険だ、目指すはやっぱボス部屋っしょー! 『真の試練』なんつーんだから……まぁさすがに神器ってこたないと思うけど、それなりに相応の報酬は期待できるってもんだぜ」
「でーすよねー。でも、どーすんの? せめて今いるここが全体のどの辺なのかぐらいはアタリつけないと、完全に当てずっぽーになっちゃうよ」
「まぁ、そうさなぁ……」

 少し思案気になる天地さん。
 ん〜……ひとまず見た感じだと……

「とりあえず、今いるこの通路は、どっちも今僕たちが向いてる側の方向に曲がるようになってるみたいですけど……」
「それだけ見たら部屋の端っこから出てきたようにも見える、かな?」
「やー、わからんぞー? そういうミスリードで、実は1Fみたくこの正面の壁の裏側とかがゴールで、ここは全体のど真ん中みたいな話もあり得る。まぁ、あれだ、ひとまずは最低限のマッピングだけしながら進んでみるしかないわな」
「だね。ここ突っ立っててもしょうがないし、テキトーに進んでみよ〜」
「よーし、どっち行くー? ……せーの――」
「「「こっち!」」」

 指差したのは、僕と天地さんが左、ミスティスが右だった。
 というわけで、多数決で左に進んでみる。

 さぁ、いよいよ冒険開始だね!


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