note.067 SIDE:G

 ミスティスが、全員に見えるようにしたミニマップのウィンドウを前に浮かせつつ、先頭に立つ。
 普段なら自分中心の一定範囲のマップが示されるミニマップだけど、今回のように地形データが全くない場合、マップそのものは何も映らないけど、地形データが認識できなくなった地点を始点とした自分の移動経路に線が引かれ続けるようになっている。
 これである程度、自動でマッピングができるようになってるわけだね。
 そして、エリア踏破率が100%になると、マップデータが完成してきちんとミニマップが表示されるようになっている。

 とまぁ、しばらくそうやって適当に進んでいくと、何やらゴーレムらしき足音が聞こえてくる。
 敵だね。
 天地さんが支援スキルを一通りかけ直してくれて、近づいてくる足音に身構える。

 と、曲がり角から姿を現したのは、案の定ゴーレム。
 だけど……

「あれ? 核が塞がれちゃってる!?」

 見た目は2Fまでのゴーレムとほとんど一緒、だけど、唯一違っていたのは、頭がない代わりに最初から核が岩で塞がれて完全に防護されてしまっていることだ。
 名前も「ゴーレム改」になってるね。
 Lv表記は107。
 なるほど、Lv80台の1F、Lv90台の2Fときて、3FはLv100台で、順当にLvが上がったという感じだね。

「えーっと……この場合どうするの?」
「あー、まぁ、大体はなんかこう、コアを露出させる手段とかなんかしら隙が用意されてるもんだ。言うてここエニルムだしな。そんな難しい話じゃないはずっしょ」
「とりあえずやってみるしかないねー」

 ひとまずはミスティスが挑発でタゲを取ってくれる。

「ふむ……」

 少し考えて、天地さんが魔力を纏わせた弾丸を、普通のゴーレムなら頭で核を隠す時には首筋の関節が繋がっているであろう場所に撃ち込む。
 銃火器用の、弓で言うところのチャージングに当たるガンナーのスキル、パワーシュートだね。
 射手のステータスを攻撃力に直接反映できない銃器の貴重な自己強化手段で、攻撃力をある程度底上げして本来跳弾される相手にもダメージを通したりできる。
 チャージングと違ってクールタイムが0なので、やろうと思えば全弾に効果を乗せ続けることもできるけど、常時発動しようと思うと、フルバーストファイアみたいな連射スキルに対してであっても1発ごとにMPが消費されてしまうんだよね。
 1発につきMP5を銃器の連射速度で消費していくのは、MP周りの補正が特段いいわけでもないアーチャー系職にはなかなかに厳しいようで、総じて、クールタイムを考慮した発動タイミングが重要な弓のチャージングに対して、MP管理が重要なのがパワーシュートという位置付けらしい。

 と、ただのゴーレムと同じなら、これで頭に相当する岩が落ちて核が露出するかと思ったけど……

「あにゃ、さすがにそう単純な話でもねぇか」

 弾丸は何の手応えもなくゴーレムの頭上を通り過ぎていっただけだった。

「ひょいっ、てっ」

 飛んできた右ストレートを軽く飛び越えて、その腕の岩を足場に、核を塞ぐ胸元の岩に直接斬りかかってみたミスティスだったけど、

「ふぎゃあああ〜〜〜! 腕痺れたあぁぁーーー!」

 「ガァンッ!!」とかなりよく響いた音がして、当たり前のように弾かれてしまう。
 あー……今のはめっちゃいい音したねぇ……。

「すっごい音したけど、だ、大丈夫? ミスティス……」
「あっははー……ちょっと痺れたけどヘーキヘーキ」

 堪らず剣を一旦鞘に戻して、右手を軽く振ってほぐすと、改めて剣を握りなおすミスティス。

「つーとまぁ、やっぱなんかコアを開けさせる方法があるんやろねぇ。ふぅむ……」
「とりま、鬱陶しいからさっさと腕落としちゃおう」

 一足でゴーレムの懐に飛び込んだミスティスは、叩き潰そうと振り下ろされた右腕に、カウンターで上向きにワイドスラッシュを発動して、肘から先を斬り飛ばしてしまう。
 続けて、前にもう一跳びして、すれ違いざまにもう一発ワイドスラッシュ、右膝の関節を斬り落とす。
 完全に体勢を崩したゴーレムは、短くなった右腕だけでは足りずに、左腕も使って必死に身体を支えるしかない。
 頽れたゴーレムの身体を悠々と駆け上がって、ミスティスは無防備な左肩口にイグニッションブレイクを差し込むと、その反動で離脱する。

「これでどーだっ!」

 支えを失ったゴーレムが、前のめりに倒れる。
 程なく、単にその場に落ちただけで距離は近かったこともあったのか、膝の関節はすぐに復活して、ゴーレムは短いながらも右腕を使ってなんとか起き上がってくる。
 すると……

「あっ」
「おぉ? なぁんだ、そういうことね」

 起き上がったゴーレムの核を塞ぐ岩には、それまで見えていなかった、右の肩口から繋がる魔力の光が現れていた。

「あー……あの岩、肩から繋がって支えてたんだ」
「でも、なんで突然接続が見えるようになったんだろう?」
「多分、左肩が落ちて、支える出力が足りなくなったんだろうな。んで、魔力が見えるぐらいまで出力上げて、無理やり持たせてるわけだ」
「なるほどです」
「ってことはーっと」

 ミスティスが、ゴーレムの左側に回り込むように突っ込んでいく。
 ゴーレムの方も、右腕を復活させて対応しようとしているけど、まだ腕が復活できていない左側に回られてしまって、ゴーレムの機動力ではミスティスの方へ向き直るのが精一杯という感じだ。
 それでも、フックを入れるように右から腕を回り込ませてミスティスを捉えようとするけど、ミスティスはそれをしっかりとエンデュランスをかけた盾で受け止めている。
 そして、ほぼ真後ろまで回り込んだミスティスに向かってそんなことをすれば、後ろの僕たちからは右肩の関節はがら空きだ。

「マイス!」
「穿て、《ブレイズランス》!」

 炎の槍で、右肩を爆破してやる。
 同時に予想通り、ゴトリと音を立てて核を守っていた岩が落ちたのが見えた。
 こうなれば……

「そ〜れっ!」

 ミスティスの掛け声と共に、ゴーレムが爆散する。
 そのフォトンの霧を破るように現れたのは、ウルヴズファングを起動した盾を突き出した彼女の姿だった。

「ふぅ〜……なんとかなったねー」
「うん」
「つまるところ、あのゴーレム改とやらは、肩から伸びる二つの魔力接続か、両肩を落としちゃえばコアが見えるようになるってことだぬ」
「わかっちゃえばなんてことないね〜」

 っていうか、「改」なんて銘打ってる割に、頭がなくなって両腕だけ落とせば核が露出するって……実はむしろ弱体化してるのでは……?

「しかしまぁ、この様子だと思った通り、順当に難易度の上がったエニルム3Fって感じかのぅ。さすがにこの先に神器ってこたなさそうね」
「だね〜。その意味ではまぁ、ちょっと期待外れかな?」
「やー、言うて当てずっぽうでもいろいろ試せば誰かがそのうちここに入れてた可能性もあったわけで、こんなLv100もいかないような場所の地下にいきなり神器があるとかそれはそれでどんな公式チートだって話だけどな」
「あはは、まぁ確かにね〜」
「ですねぇ」
「ま、そろそろ次いこ次ぃ〜♪」
「おぅいぇ」
「うん!」

 なんて、和やかに話しつつ、僕らは再び歩を進めていく。
 さぁ、次は何が出てくるのかな?


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