note.073 SIDE:G

 まずは、あの骸骨を護るバリアみたいなのを突破する手段を探さないとね。

「とーりあえず一番単純なのはバリア自体に別でHPが設定されてるパターンかね、っと」

 天地さんが全弾にパワーシュートを乗せたフルバーストファイアを撃ち込んでみるけど、

「手応えなしっとー……おっと」
「ヌゥン!」

 全てバリアに弾かれてしまい、骸骨から反撃とばかりに、槍投げでもするかのようにしてブレイズランスが飛んでくる。
 それを天地さんは……えぇぇ!?片手で掴み取って握り潰した!?
 いくらLv差があるとは言え、凄まじいことをサラッとやってのける天地さんに、思わず攻撃の手が止まってしまうぐらいには文字通り開いた口が塞がらなくなってしまってたんだけど、

「ん〜ん、ま、さすがにここのLvじゃねぇ」

 なんて、当の本人は涼しい顔だ。
 なんというか……Lvの隔絶を改めて感じるね……。
 そしてやっぱりLv差がありすぎるとこういう漫画みたいなことが普通に可能になってしまうのは実にファンタジー……。

 と、僕があっけに取られている間に、タゲが天地さんに向いた隙を突いて、ミスティスは骸骨の後ろに回り込んでいた。

「じゃなきゃ、どっかに穴があるとかかなっ!?」

 跳躍して、バッシュで斬りかかる。
 だけど、バリアはしっかり背後もカバーしてるみたいだねぇ。
 ミスティスはそのままバリア上を滑らせるように上から下まで両断してみるけど、攻撃が通るような場所はなく、刃はバリアの上をなぞっただけでダメージにはなっていないようだ。

 骸骨がミスティスに反応して後ろに向き直る、その瞬間のこちらを向いた右側面に向かって天地さんが照準、一瞬薬室部分に魔力が集まるエフェクトを光らせてから弾丸を発射する。
 弾薬に自分の魔力を追加で充填することで威力を上げた弾を発射するガンナースキル、マグナムシュートだね。
 もちろん、パワーシュートも乗せられている。

 この世界の弾薬はジェムパウダーによる魔力爆発を装薬として利用するから、こうして自分の魔力を追加で込めることで、薬室に装填した段階からでも能動的に強装弾に変えてしまえるってわけだね。
 まぁ、当然ながら射撃の反動はその分大きくなるから、DexとStrがギリギリだったりすると増えた反動のせいで精度が落ちたりしてしまう点には気を付けないといけないスキルだ。

 だけど、側面にもやはり弱点らしい弱点はないみたいで、バリアに弾かれて終わる。
 というか、もしバリアにどこか隙間があるとするなら……

「《フレアボム》!」

 ここまでのLvアップでようやく無詠唱を達成できたフレアボムで、骸骨の全身を吹き飛ばすつもりで爆破してみる。
 けど、

「ダメじゃん!」
「知ってた。ま、やっぱなんか与ダメ以外のギミックがある感じか」
「みたいですね」

 やっぱりというか、ちゃんとバリアは隙間なく全身を覆ってるみたいだねぇ。
 完全に骸骨の全身が爆風に呑まれたにもかかわらず、全くダメージは入っていなかった。
 それに、三人からここまで攻撃されてバリアが消える様子もないってことは、バリアにHPがあるという話でもなさそうな感じだ。

 骸骨の方はと言うと、一定間隔で手に火の玉……と言うよりは、鬼火みたいな炎を生み出してはミスティスに向かって投げつけている。
 魔法攻撃みたいに見えるけど、必中というわけではなさそうで、むしろ弾速自体は僕のAgiでも十分目で追えるような速度だ。
 ミスティスも、避けれるものは避けつつ余裕を持って対処できている。
 あれが骸骨の通常攻撃ってことなんだろうね。

 タゲはひとまずミスティスに向かっているみたいだし、その間にギミックのヒントがないか探していこう。

「ふぅむ、んー……こういう時、お決まりのパターンっつーと、部屋ん中のどっかに解除ギミックが仕込まれてるか、特定の行動の前後にだけ隙ができるかって辺りだが……」
「となると、あからさまに怪しいのは……アレ、ですかね」
「ま、だろうな」

 僕たちが目をつけたもの――この部屋で何かそういう仕掛けになりそうな目立つものと言えば――そう、奥の石棺ぐらいしかない。

「ほんじゃ仕掛けてみますかいね」
「はいっ! 《ブレイズランス》ッ!」

 頷いて、僕がブレイズランスを、天地さんがパワーシュートを乗せたマグナムシュートを、それぞれ石棺に向けて放つ。
 すると、

「ヌゥゥッ!?」

 骸骨が即座に反応して、その射線に自ら飛び込んでバリアで僕らの攻撃を弾いた。

「ビンゴ、だな」
「ですね!」

 予想通りの骸骨の反応に、内心で少しガッツポーズしてしまう。
 多分、あの石棺にダメージを与えられればバリアが解除できるってことだね。

「チカ! 奥の石棺がバリアの発生源だ! アレを叩く!」
「! なるほどね、りょーかいだよ!」

 突然動きを変えた骸骨に少し戸惑っていたミスティスに天地さんがギミックを伝える。

「簡単にやらせると思うたかっ!」

 骸骨が石棺の前に陣取ると、両手に炎を宿す。
 そして、腕を掲げてその炎を頭上で一つに合体させて一つの巨大な火の玉にすると、さらに石棺からも何やら魔力が供給されていく。

「チッ、何かする気だ! 《プリズムシールド》!」

 舌打ちしつつも、天地さんは骸骨の行動を魔法攻撃とみて、全員にプリズムシールドをかけ直してくれる。

 その間にも火の玉は魔力供給を受けて膨れ上がっていき、掲げた両手一杯になったところで、

「オォッ! 《ブレイズランス》ッ!!」

 大仰に溜めた割に発動したのはブレイズランス?と思ったのも一瞬……飛んでくるのが一発じゃない!?
 火の玉から次々と、ほとんど間断なくランダムターゲットでブレイズランスが連射されてくる。
 これ程の連結詠唱……一体どれだけの精度で魔力制御してるの!?

「《エンデュランス》! ……っくぅーーー〜〜〜〜〜〜!!」

 ミスティスはその全てを盾で受けていく。
 連続のブレイズランスでノックバックはキツそうだけど、プリズムシールドと、ウォルフラムシールドの火属性耐性でダメージ自体はそれほどでもなさそうだね。

 っと、僕の方にもブレイズランスが来る……!
 だけど、当然ながら僕は盾なんて持ってないし……ここで取れる僕の最善手は――

「《フロストスパイク》!」

 普通は普段みたいに、連続ノックバックで敵との距離を強制的に最大射程まで引き剥がして、分断したり詠唱時間を稼いだりするように使う、最も基本的な初級氷魔法。
 だけど、このスキルがマジシャン系の防御の要と言われる理由はもう一つ。
 それは、軌道上に残る無数の氷の棘は一時的な遮蔽物にもなるってこと……!

 発動と同時に、一本一本が僕の身長ぐらいもある巨大な氷の槍の裏に身を隠す。
 ついでに氷の槍は石棺まで届いて、多少のダメージを与えることに成功したようだ。
 とは言え、さすがに初級魔法一発程度では威力が足りなかったか、骸骨の攻撃は止まらない。
 それでも、僕に向かう攻撃は狙い通り、全部氷の槍壁のどこかに当たってしまってここまでは届かないみたいだね。

 そしてやはりというか、驚くべきは天地さんで、一体どうやっているのか、対象指定魔法のはずのブレイズランスを右脚を軸に軽く一回転しただけで紙一重で躱し、次弾を左手だけで軽くいなして軌道を弾いたかと思えば、パワーシュート付きのマグナムシュートで三発目を正確に迎撃、四発目はプリズムシールドを張った魔導書で防ぎ、五発目を反転しつつ素手で掴み取ると、なんとその槍の勢いのままぐるりと一回転、続く六発目に向けて投げつけて相殺してしまう。
 えぇぇ……なんかもう全体的にどうやってるの!?どういうことなの!?

「グッ……ヌゥ……!」

 骸骨の方もさすがに魔力切れのようで、膝を突くようにふらりと地に落ちる。
 ……まぁ、脚はないんだけど。

 ともかく、ここがチャンスだね!
 今度は僕から!

「《ブレイズランス》!!」

 僕のブレイズランスと同時に、天地さんからはパワーシュートを乗せたフルバーストファイアが飛ぶ。
 そしてミスティスは……

「いけええぇぇぇっ!」

 剣を投げたー!?
 って、ちょっと驚いたけど、そうか、あれソードゴーレムだったね。

 三つの攻撃が突き刺さり、石棺を護っていた結界のようなものが割れる。
 同時に、ガラスのような音を立てて骸骨のバリアも割れたみたいだった。

 その瞬間には既に、盾にセットしたままだった元々使っていた方の剣を抜いて、ミスティスが上空へと跳んでいて――

「もらい〜〜〜っ!」

 全力のマグナムブレイクで骸骨を爆破した。

「オオオォォォォォ…………ッ!」

 舞い上がる土煙からミスティスが離脱し、骸骨の断末魔が響く。

「やったか!?」
「みんな好きだねそのフラグ!?」
「そりゃー言っとかないと逆にお約束ってもんでしょーよ」

 ミスティスのツッコミに、天地さんはビシリと親指を立ててみせる。
 ……うん、正直僕も言おうかと思ったけどこないだ銅鐸で1回やってるから自重しておいた。

 土煙がようやく晴れて、そこにあったのは全部バラバラに崩れた骨の山。
 だけど……

「フッハッハッハッハ! やるようだな、面白い! よかろう、これより我が全力を見せてやろう!」

 またどこからともなく声が響くと、石棺の前、骨が落ちた位置にちょうど刻まれていた紋章刻印が起動する。
 立ち昇る魔力のオーラに包まれて、バラバラの骨が浮かび上がりながら、カタカタと元通りに組み上がっていく。
 そして、全てが組み上がり、それなりの高さに浮かんだところで……脚が生えた!?

 背骨の先にフォトンが集まったかと思うと、骨盤が生まれ、続いて両脚の大腿骨、膝蓋骨と脛骨……と順々に脚の骨が召喚されていき、今度こそ完全な人型の骸骨が完成する。
 元々上半身の時点でそこそこ巨大だっただけあって、全てのパーツが揃った今は5メートルぐらいはありそうな巨体だ。
 その足でしっかりと地面を踏みしめた骸骨が、続けて右手を掲げると、その手の中に骸骨の巨体に合ったサイズの巨大な片手剣が召喚される。
 そうして、こちらに向けて一歩踏み出しつつ、その剣を軽く一振りすれば、呼応するように紋章刻印の光が消える。
 最後に空いた左手に再び炎が灯ると、骸骨が文字通り骨を鳴らす。

「さぁ始めるぞ! 全力で来るがいいっ!」

 なるほど、ここからが本番、だね!


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