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note.214 SIDE:G

 ライダーキングことキング・オブ・ジェネラルライダーをようやく撃破できて、これで前半の山場は越せたってところかな?
 だけど、まだまだレッサーライダーの残党は残っている。

「前線班は引き続き通常通りの規定時間まで戦線を維持してください」

 ジャスミンさんからも早速戦闘続行の指示が出たね。
 それに従って、僕たちも戦列を整え直して向かってくるレッサーライダーの大群に備えていると、

「なぁ、さっきの見たか?」
「あぁ、すごかったよな、スキル宣言なしのダブルピアーシング……。あんな空中での切り返し、アシストなしでよくできるな……。あの両剣使い、何もんだ?」
「さぁな。まぁどうせ誰かのサブキャラだろ? あんなんサラッとできんのは」

 なんて話が聞こえてくる。
 やっぱり、あれを当たり前みたいにやってるミスティスは知らない人から見ても異質ってことだよね……。
 まぁ当の本人はそんな会話にはまるで気付いていないようで、

「なになに……? おー、いーじゃんこれ!」

 なんて、今しがたもらったMVP報酬の確認の方に夢中みたいだけど……。

 何やら使えるものが出たようで、その左手に取り出したのは……短剣……?……だね。どうやら狼の牙を模したらしい、わずかに内向きの反りの入った短剣だ。
 取り出したそれを、ミスティスは盾の裏側に、両剣とは垂直に、真横に差し込むような形で装着する。

「短剣? どんな性能だったの?」

 気になって聞いてみれば、

「えっとねー、ま説明するよりちょうどいいから今使ってみる方が早いかな」

 と、ミスティスはレッサーライダーの方へ対峙する。
 気になるところだけど、まぁそういうならまずはどうなるか見てみようか。

 そうこうしているうちに、いよいよあと数秒もあれば接敵するというところまでレッサーライダーの残党が迫ってくる。
 けど、ライダーキングがかけていた統率やらステータスバフもなくなったし、何より僕たちのLvも激戦を経て169と、前回の休憩時間時点と比べても既に11も上がっている。
 もはやなんのバフもない残党連中なんて敵じゃないよね。

「いっくよ〜!」

 レッサーライダーたちの先頭が間合いに入ろうかという直前、さっきの短剣を抜いたミスティスが、短剣を盾に打ち付けて挑発を発動する。
 すると、「カオオオォォォ――ン!」と、まるで狼の遠吠えにも聞こえるような独特な金属音が響いた。
 その途端、

「――――!?!?」
「キャウゥゥ……グルル……バゥッ! ワンッ!」

 何故かミスティスに迫っていたレッサーライダーたちが一斉に急停止したかと思えば、ゴブリンはウルフから飛び降りてしまい、反転して逃げようとして、しかし押し寄せる後続に阻まれてあたふたと右往左往し始め、ウルフの方も足を止めて威嚇するように吠えてくるけど、明らかに足が震えていて虚勢を張っているのがわかる。

 これは……発動者に対するターゲット固定と攻撃不可とスキル使用不可、確率での移動不能または逃走を付与する「恐怖」の状態異常だね。「混乱」と同様に、強力な分Lv差がかかりやすさにかなり大きく影響するタイプの状態異常だけど、まぁボスからのバフも消えてしまったLv90台でしかないレッサーライダーたちに、今やLv170近くまで上がっているミスティスから発動したんだから、そりゃあ効果は覿面ってやつだよね。

「えっと……こ、これは?」

 困惑しつつモレナさんが訊ねると、

「さっきの報酬、ウォルフラムファング! ウォルフラムシールドとセット効果で、この二つで挑発すると恐怖が一緒にかかるんだって」

 牙型の短剣を掲げて、両剣に取り付けた盾――ウォルフラムシールドをコツコツと叩いて見せながらミスティスは答えた。
 なるほど、同じ「ウォルフラム」シリーズの装備ってことだね。

「な〜るほどー。な、なんかここまでパニクってると逆にかわいそうに見えてこないこともないけど……まぁ後ろも詰まってるし、ごめんね〜」
「クゥーン……キャウゥンッ!」

 納得したモレナさんが、恐怖に固まってしまっているウルフの一匹に歩いて近づくと、謝りつつも容赦なく両断してしまう。
 ……うん、本当にいっそ哀れなんだけど、敵は敵だし、言う通り挑発の範囲外だった後続はお構いなしにこちらに迫ってきている。恐慌状態の奴らはさっさと片してしまおうか。

「うぅ……な、なんか罪悪感がすごいです……」

 とは一通り終わってからのエイフェルさんの感想。
 ……うん、まぁ、気持ちはわかるけども……。

 当のミスティスも、

「う〜ん……さ〜すがにこれじゃヌルゲーすぎるからフツーにやろっかー」

 と、短剣を盾の裏に戻していた。

「よーっし、気を取り直して……次が来るよー!」

 そんなわけで、改めてミスティスを筆頭に、レッサーライダーたちの残党の群れへと飛び込んでいく。

 まぁ、そこからは何事もなくって感じだね。
 モレナさんがメインでタゲを引いて、後ろ三人で火力支援、その前方でミスティスが無双してこっちに流れてくる敵を間引く、僕たちの連携の基本陣形に戻ってサクサクと殲滅していく。

 ただ、当然の流れとして、元々ちらほらと混ざり始めていたセブンスターとかプリズムバグなんかのティッサ森のMobたちが段々と数を増してきてる感じがするね。
 とりあえず僕としては、魔法無効のプリズムバグにうっかり魔法を撃ってしまわないように気を付けないと……。ここまでの戦いの中でも、たまにやらかして固有スキルのプリズムリフレクトでそっくりそのまま反射されて事故ってるパーティーを何回か見てるからねぇ。

 戦いを続けていると、

「おっと、スライムじゃ〜ん」

 飛び込んできたブルースライムをミスティスが両断する。それを皮切りに、マンイーターだったり、蜜がないと意外と飛翔速度の速いハニーパピヨンなんかが混ざり始めて、相対的にウルフとゴブリンの数が体感でも明確に減っていく。
 ついに本格的に群れの主力がティッサ森勢力に移り変わってきた感じかな。ユニオンワスプとかシザーズスタッグみたいな大物はまだ出てきてはないけど、この様子だとそれも時間の問題っぽそうだ。
 敵のLvも、本来Lv100〜110台ぐらいがティッサ森のLv帯だけど、やっぱりスタンピードだからか、Lv140前後ぐらいにかなり強化されている。
 とは言っても、僕たちのLvももう170近いわけで、四重バフと合わせてまだまだ余裕の無双状態には変わりないね。

「っとぉ、ほいっ、ほ〜いっ♪」

 ミスティスがマンイーターの咬み付きを姿勢を落として避けつつ、すれ違いざまにその茎を切り落とし、自然と腰だめの姿勢になった勢いのままに目の前に来たスライムをピアシングスラストで貫くと、そのまま刃を地面に突き刺して支柱として前方宙返りからの超低空クレセントスラッシュで後続のレッサーライダーを真っ二つにする。

「てりゃあっ! らっくしょう!」

 モレナさんも、回転斬りに派生させたワイドスラッシュで数匹まとめて斬り飛ばすと、さっきも見せたクロスディバイドのタゲを左右に変更する応用技で更に後続の二匹を同時に片付ける。ミスティスに負けず劣らずの大立ち回りだね。
 そんな状態なので、エイフェルさんと謡さんも、

「やぁっ!」
「《チェインライトニング》!」

 アローレインにチェインライトニングと、連携というよりはもはや各々で目に付いた敵を片っ端から蹴散らす感じになってるね。

 まぁこうなると当然僕も、

「《ファイヤーウェイブ》!」
『《エアロブーメラン》』
「リーフィー!」
「任せなさいな!」

 ステラとリーフィーも一緒に完全に無双状態だよね。

 ファイヤーウェイブは、錨みたいな形の刃を飛ばして横一線の広範囲に斬撃判定のある属性ダメージを与える中級魔法の「ウェイブ」シリーズの火属性版。

 リーフィーも攻撃範囲を重視してか、今までの根っこ攻撃に加えて一枚3mは超えてるだろう巨樹の葉っぱを召喚して、回転する刃として飛ばしていた。前にマリーさんの召喚した椰子の樹――ナパームトレントも使っていた、植物系魔物の多くが使える固有スキル、リーフスラッシュだね。
 根っこの攻撃も、先端で突き刺す直線状の攻撃や成長に巻き込んでの圧殺がメインだったさっきまでと違って、鞭……というよりこの太さだともはやハンマーと言って差し支えない、横から薙ぎ払う範囲重視の戦い方に切り替えているようだ。

 そこからは目立った問題も起こることはなく、

「規定時間の経過を確認しました。戦列を交代します」

 ジャスミンさんのアナウンスでバックアップ班に引き継いで、二巡目の戦闘が終わったのだった。


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