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note.213 SIDE:G

「K1、P1班壊滅! 緊急事態につき、バックアップのK1、P1班で戦線を維持してください!」

 マズいね……ついに壊滅したパーティーが出始めた……! このままだと戦線も維持できない……!
 けど、この状況で他を助ける余裕なん……て……?……あれ? あー、うん、確かに動きは明らかに厄介になってるけど、再召喚でデバフがリセットされてるだけで、取り巻きたちのステータス自体には元々の一重バフしかかかってない状態だから、四重バフで差し引きまだ三重バフ分のステータス差がある僕たちだけなら実はこれまだ割と余裕あるね?
 的確に後衛、それも防御が薄くてパーティーの要にもなる支援役から優先して狙いにくる戦略も、ステータスで勝てているならむしろ分かりやすくて対処も楽だ。

「バオゥッ!」
「《ブレイズランス》!」

 謡さんの視界の外から飛びかかろうとした一匹をブレイズランスでしっかりカバーして仕留めてあげれば、

「ガフッ!」
「――!」
「行かせませんよ!」

 タイミングを絶妙にズラして連携しようとしていた数匹に加えて、後ろにいた僕の方に向かってきていた一匹もまとめて、エイフェルさんがチェインアローにブラスティックアローを組み合わせて連鎖全部にブラスティックアローの爆発攻撃を上乗せする合わせ技のチェインブラストで吹き飛ばして、

「ガァッ!」
「《サンダージャベリン》!」
「――――!」
「バウッ!」
「スゥ――……やあっ!」

 モレナさんに向かった三匹同時の飽和攻撃は、謡さんがサンダージャベリンで一匹を消し炭にして、残った二匹もモレナさんが一旦剣を納めてからの居合に似た抜刀、一瞬分身したように見える程の高速で回避判定と共に左右から×字に袈裟斬りの二連撃を加えるクロスディバイドを、左右の斬撃でターゲットをそれぞれ変える応用技で二匹同時に斬り捨てる。

 ミスティスに至っては、

「《コンセントレーション》! ほっ、といっ、はっ、しぃ〜……ったっ!」

 多分あれまたフルコンセントレイトだよね……。正面からきた一匹を、跳び上がって既に機動変更が不可能になったタイミングでわずかに踏み込んで間合いをズラして、完全に勢いを殺してしまいつつ盾で受けてカウンターついでに手元を回して斬り上げでかち上げて、飛ばされた空中でソードゴーレムでトドメ、それと同時に右からの追撃を側宙で躱すついでに着地先の一匹を足蹴に踏みつけて、後ろ向きにバレルロールするみたいな捻りを入れた機動で後ろから来ていた一匹の更にその背後を取ってしまってダブルバッシュで切り伏せ、残った隙だらけの左右を、地面に刺した両剣を軸にした前方宙返りでほぼ地上で無理やりクレセントスラッシュを発動させることで回転を乗せて威力を増したイグニッションブレイクという、変形マグナムブレイクみたいな合わせ技で一息に消し飛ばしてしまう。
 ……うん、なんかもうやってること完全に曲芸なんだよね……。一人だけ明らかに動きが異次元すぎる……。

 まぁともあれ、僕たちだけならこれでひとまず手が空いたね。
 となれば……

「リーフィー!」
「えぇ、任せなさいな!」

 僕の呼びかけだけでリーフィーはしっかりと意図を汲み取ってくれて、檻を作るように根っこを複数召喚してライダーキングを拘束して、そのまま根っこを成長させて圧し潰す。

「「――――!?!?」」

 巨大な一本に融合しながら成長を続ける根っこに取り込まれて、メキメキと嫌な音を立てながらライダーキングが悲鳴を上げる。

 ジェネラルウルフの動きが止まったことで、無事に統制バフも切れて元の統率に戻ったようだ。

「――――……!?」
「!!?」
「隙を見せたな! そこだっ!」
「っ!! 連携が緩んだ! 今だ!」

 おかげで、周りのみんなも反撃の糸口を掴めたみたいだね。

「K1、P1班、復帰しました。速やかに戦線の再構築をお願いします!」

 壊滅しちゃったパーティーも、幸いプレイヤーのパーティーだったらしい。ストリームスフィアで復活してすぐに戻ってきてくれていた。

 そうしている間にも根っこは成長を続けていて、なんならこのまま圧殺してしまえるかとすら思えたんだけど、

「―……――……―…………――……!」

 ゴブリンキングが、なんとかまだギリギリ動く手首でわずかながらも杖を振るう。と、根っこに火がついて、一瞬で全体に燃え広がってしまう。
 さすがにこうなってはどうしようもなく、根っこはフォトンへと還っていき、拘束が解かれてしまう。

「あら、やるじゃない。自分ごと燃やすだけの覚悟があったなんて」

 素直に感心した様子で称賛するリーフィー。
 僕はそれよりも、根っこが燃やされたことの方を思わず心配しちゃったんだけど、

「わ……え、燃えちゃったけど、大丈夫なの? リーフィー」
「安心なさいな。あれはあなたたちの分類で言うなら具象型の召喚よ。魔力で作っただけの仮初だから、本物の私自身じゃないわ」
「そっか、よかった」
「ふふっ、心配しすぎよ。まぁでも、気にかけてくれたことは感謝するのだわ」

 そう微笑んで、リーフィーは信仰の光を輝かせる。そういうことなら安心だね。

 っと、それはともかく、ライダーキングの方は……

「「――――!!」」

 脱出のためとは言え、自分で放った火が燃え移ってまた二匹共々炎上ダウン状態になっていた。
 ここで僕たちが手を緩めるわけもないよね。

「よ〜っし、いけいけ〜♪」

 ミスティスが両剣を回転させながら「∞」を描くような軌道でジェネラルウルフを延々と右に左にと斬り続ける。
 MPを消費し続けながら、MPの限り文字通り無限に斬り刻み続けることができる両剣スキルのインフィニティスラッシュだね。

「よっしゃー、ゴーゴー!」
「やぁっ!」
「《サンダージャベリン》!」

 ゴブリンキングの方にも、モレナさんのクアッドピアーシングに続いて、エイフェルさんのバーストアローと謡さんのサンダージャベリンが次々と刺さる。

「《ウィンドピルム》!」

 僕ももちろん、炎上の効果増幅も狙って、ステラを使ってゴブリンとウルフ両方を貫通できるような射線でウィンドピルムの追撃を放つ。

「おりゃ? なんか知らんけどまた燃えてんじゃん。っらぁっ!」
「ちょうどいい、お礼参りだあぁっ!」

 取り巻きの処理を終えたパーティーたちも続々と戻ってきて、最後はまたみんなでフルボッコだ。

 結局、ウルフの咆哮バリアで再び立て直される頃には残りのHPはすっかり10%を割るぐらいになってしまっていた。
 ジュエルイーター戦の時もそうだったけど、リーフィーの根っこの締め上げはだいぶ強力だねぇ。HP25%からの削った15%ぐらいの内、多分10%ぐらいは彼女のおかげなんじゃないかな。実際、燃やされなかったら本当にあのまま圧殺しちゃいそうな勢いだったもんね。

「C1、W1班、ゴブリンライダー撃破! 引き続き前線の維持にあたってください」

 周りの中ボス、普通のゴブリンライダーもそろそろ撃破され始めてきたみたいだね。少しずつ状況が持ち直してきていることが肌で感じられる。

「いーよいーよ〜! このまま押し切っちゃえ〜♪」

 ミスティスも、一層テンションを上げてライダーキングへ突っ込んでいく。

「ゴブリンライダー撃破、L1班はキング・オブ・ジェネラルライダーへの応援をお願いします!」
「任せて! お待たせ、助けに来たよ!」
「援護する!」

 ライダーキング指定班だったけど、位置的にゴブリンライダーへの対応を優先で指定されていたL1班も無事にライダーを倒せたみたいだね。ジャスミンさんの誘導で、僕たちライダーキング組に加勢に来てくれる。
 増援も加わって、残りのHPも1割、もうこれ以上大技もないだろうし、このまま押し切ろう!

 周りのみんなも大体考えることは同じみたいだね。

「っしゃあ、あとちょい、そろそろ決めんぞ!」
「削り切るよ!」
「押し込めーっ!」

 士気を上げて、勢いよく突っ込んでいく。

「そんじゃ〜終わらせよっか!」
「アタシらも行くよ!」
「「はいっ!」」
「うん!」

 僕たちも、ミスティスに続いてライダーキングの下へ向かう。
 こうなったらもう本当にみんなでボコすだけだね。
 ライダーキングもなけなしの魔法や咆哮で抵抗してくるけど、もう通常の攻撃パターンはみんな全部見切ってしまっている。絶え間ない波状攻撃状態で、ほとんど何もできていないまま、みるみるHPが削られていく。
 もはや苦戦する要素はないね。

「全上位個体『ゴブリンライダー』の撃破を確認。担当班は引き続き前線の維持にあたってください」

 中ボスライダーの方も既に全滅したようだ。あとはライダーキングだけ!

「今っ!」
「そこだぁ!」

 アサシンの人のラッシュブロウに合わせて、チャージアタックで巨大化した大剣が振り下ろされる。

「そこですっ」
「『《ブレイズランス》』!」
「《サンダージャベリン》!」
「終わりよ!」

 怯んだ隙が見逃されるはずもなく、僕たちも含めた遠距離組の攻撃が殺到して、

「〆るよ〜っ! 《コンセントレーション》!」
「てりゃあっ!」

 ミスティスがコンセントレーションを発動させるのと同時に、モレナさんがクアッドピアーシングを決めて、他の近接組からもそれぞれの大技が放たれる。

「ほぉ〜いせーのっ!」

 それに混じってピアシングスラストでゴブリンキングを深々と貫いたミスティスが、フォトンへと崩れていく直前のその身体を足蹴に一旦離脱、空中で後方宙返りからの、

「おっしま〜〜〜〜〜〜いっ!!」

 ウルヴズファングも起動しての全力のピアシングダイブ。これ以上ない完璧なダブルピアーシングを決めて、残ったジェネラルウルフを刺し貫く。
 ウルフの背後まで斬り抜けて着地を決めたその後ろで、一拍の間を置いて――爆散。

「最上位個体『キング・オブ・ジェネラルライダー』、撃破を確認しました!」

 ジャスミンさんの宣言と共に、みんなから歓声が上がる。

「よーやく終わった〜!」

 残心を終えたミスティスが、両剣を一度地面に突き刺して大きく伸びをする。
 その背後で、

「およ?」

 ライダーキングの爆散したフォトンが虹色の渦を巻いて……しかし、いつものフォトンクラスターには集束せず、渦は幾本かの虹色の帯に分かれて、周囲にいた何人かの下へと向かってそのまま光が触れた人に吸収されてしまう。その内の一人はミスティスだったね。

「いーね、MVPもらい〜♪」

 どうやら、こういうスタンピードクラスの超複数パーティー前提のレイドボスになると残留思念も一つにまとまりきれずに分散してしまうらしくて、MVP報酬のシステムは、まず全参加者からパーティー単位で3位までのMVPパーティーが選出されて、その3パーティーそれぞれの中でのパーティー内MVPとなった人に自動的に報酬が付与される形になっているらしい。
 うん、まぁ、こういうスタンピードの途中みたいな状況とかだといちいちクラスターの所有権がどうとか集束を待ってクラスターに触りにいくとかやってる余裕もないだろうからねぇ。その辺のトラブルを防ぐためのシステムってことだろう。

「って、それはいいけど、喜んでる暇もなさそうだよ!」

 モレナさんが剣先で前方を指せば、残党となったレッサーライダーたちがまだまだ津波のごとく押し寄せてきているのが見えていた。
 当然、上空のジャスミンさんも状況は見ているようで。

「ローテーションを通常の体制に戻します。バックアップ班は任意のタイミングで待機列へ下がって問題ありません。前線班は引き続き通常通りの規定時間まで戦線を維持してください」

 実際、休んでいるような時間もなさそうだね。
 親玉も倒して、そろそろいよいよ本命のティッサ森のMobたちのお出ましになりそうだけど……まずは残敵の掃討から。
 ここまでの激戦でかなりLvも上がってることだし、統率を失ったレッサーライダーなんてわけないね。ぱぱっと片付けちゃおうか。


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