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note.212 SIDE:G
戦場は第二防衛ラインへと移って、まずは戦線の立て直しだね。周りのパーティーとも足並みを揃えつつ、第一防壁へと向けて走る。
そうしている間にも既にこの距離でもポロポロと壁が崩れ始めている音が聞こえてきていて、壁自体にもミシミシと亀裂が拡がっていくのが目に見える。
壁までの距離が残り半分を切った辺りで、「ゴッ!」という音と共に、それまで各所でバラバラに拡がっていたひび割れが、壁自体が折れるかのように大きく上下に裂けながら一気に繋がって、決定的な亀裂がが走った。
「壁が崩れるぞぉぉぉっ!!」
誰かがそう叫んだのと、果たしてどちらが早かったか。
「バガッ!!」と、一瞬、音を波として感じた程の轟音が地を震わせ、ついに第一防壁が崩れ去る。
と同時に、おそらく崩れる前から既にほとんど圧死状態だっただろう、大量のウルフとゴブリンたちがドミノ倒し状態となって、後続の仲間たちに容赦なくぐちゃぐちゃに踏み潰されていく。更にその後続たちも、根本を押し崩した故に自分たちの側に倒れてくることになった壁やその瓦礫に次々押し潰されていく。おかげでかなり凄惨極まる光景になりかけていたんだけど、そこはまぁ、リアルではないこの世界。それらの大半はフォトンへと還っていき、死体として残った一部も崩壊を逃れた更なる後続や壁の残骸の波にあっという間に埋もれていってしまう。
……うん、とりあえずスプラッター展開は回避されたみたいだね。
あれだけの上級魔法の攻撃だったけど、ボス個体は未だ全員生きているらしい。残りのレッサーライダーたちを引き連れながら、瓦礫の山を踏み越えて進軍してくる。
ライダーキングも、4割半ぐらいだったHPが4割弱ぐらいまで削れていたけど、まだまだ健在といったところだ。
そこはまぁともかくとして、壁を越えてきた敵陣と僕たち前線班パーティーの先頭がいよいよ接触する。
「どぁらあああああぁぁぁぁっ!!」
一番槍となったウォーリアーの人が、大剣でジャイアントスイングでもするように高速回転しながら敵陣中心のライダーキングへと突っ込んでいく。
回転は竜巻を巻き起こし、周囲の敵をかなりの勢いで引き寄せつつ、巻き込んだ敵をバラバラに斬り裂いて進んでいく。
これまた見たままシンプルなウォーリアーの大剣スキル、サイクロンチャージだね。
ウォーリアーってやっぱりこういう説明不要のシンプルド直球、かつ見た目にド派手で豪快なスキルが多いよねぇ。ミスティスみたいな両剣スキルはまたちょっと毛色が変わるけど。
結果的にウォーリアーの人が露払いになって空いた道をミスティスが一気に加速して吶喊する。
「とぉぉ~~~~~~いやっ!」
メテオカッターからのイグニッションブレイク……の着地直前に更にクレセントスラッシュで回転を入れて速度を乗せた!? え、今すんごいサラッとやったけど3スキル複合って可能なんだ!?
なんかもはや上級魔法もかくやとばかりの大爆発でライダーキングがぶった斬られて、周囲に護衛のように着いていたレッサーライダーたちがまとめて一息で消し飛んでしまう。
僕たちはまだ四重バフのアドバンテージがあるからとはいえ、だいぶ規格外な威力だね!?
「ヒュー、やるねぇ、あの両剣使い」
「チッ、一人でいいカッコなんかさせるか! うおらぁっ!」
かなりド派手に決めたこともあってか、周りのみんなも触発されたように士気を上げて、取り巻きを蹴散らしながらライダーキングに向かっていく。
「アタシたちもいくよ!」
「「はいっ」! 行きましょう!」
モレナさんたちも今度はライダーキング戦の方に加勢するみたいだね。
「ガァッ!」
「ほっとっ」
ミスティスが袈裟斬りの軌道で振り下ろされたジェネラルウルフの爪を盾で受けると、そのまま滑り落とすように下に受け流しつつ、手元を回して逆に上の刃でカウンターの袈裟斬りを入れてみせる。
ウルフはこれで一瞬怯んだけど、その隙にゴブリンキングの方が何か詠唱しにかかる。
「――! ――、――――……」
「おっとぉ?」
「させません!」
「《ブレイズランス》!」
「――!?」
でもそれもすぐに察したミスティスがバックステップで一旦距離を置いてくれたから、空いた射線を通してエイフェルさんのバーストアローと謡さんのブレイズランスが刺さり、僕たち他の遠距離組からもそれぞれの攻撃が飛んで、こちらも中断させられる。
続けて、
「フッ!」
「!? バゥァッ!」
いつの間にかまた背後にいたアサシンの人がラッシュブロウの連撃を叩き込むと、反射的に尻尾によるカウンターを入れつつジェネラルウルフがそっちに反転してしまう。けど、その瞬間には既にアサシンの人はクローキングで姿を消して離脱してるんだよねぇ。
「も~らいっと~♪」
「隙だらけなんだよオラァ!」
「ガルァァッ!?」
「――――!?」
おかげで完全に正面の僕たちからは背後が狙い放題だね。全員からの波状攻撃で容赦なくフルボッコにされていく。
そんな調子で今のところは僕たちの方が終始圧倒していて、危なげなく戦えてる感じだね。
まぁ、一度倒されて再召喚になった取り巻きはリセットされてただけで、ライダーキング本体の二重デバフはまだかかりっぱなしだし、みんなの二重バフもまだ有効だ。ステータス差がかなりあるから、だいぶ余裕あるね。
状況が変わったのは、残りHPが25%に差し掛かってから。
「ワオオオォォォォォォ――」
「――、――、――――!」
「っ! また回復……!」
「HP25%だ! 来るぞ!」
50%の時と同じ、遠吠えのバリアとゴブリンキングによる25%ぴったりまでのHP回復。何か追加の大技が来るってことだね……!
「アオオオオオオォォォォォォ――!」
回復し終わったと思えば、更にもう一度の遠吠え。ただ、その音波は今度はバリアではなく、取り巻きを再び再召喚させる。
「ぐっ、またか!」
「今度はなんのつもりだ!?」
みんな何が起きるか警戒しつつ再召喚された取り巻きと対峙する中、途中から遠吠えが発する音波のオーラの色が違ったものになる。すると、
「アオォォォ――!」
「ワオォーーーン!」
再召喚されたレッサーライダーのウルフたちが次々に呼応するように遠吠えを上げる。
「うわっ!?」
「うるっせぇ! 今度はなんだ!」
対応して、みんなも更に警戒を強める。
これは……何が起こって……!?
「ガルアァァッ!!」
ジェネラルウルフの一声で、取り巻きのレッサーライダーたちが一斉に襲い掛かってくる。
けど、これは……うわぁ!? 今までにも増して連携の練度が明らかに上がってる!?
「なぁっ!? ちょっ、ちょまっ!?」
「しまった……!」
「キャアアッ!?」
「ぐわっ!? まっ、待てっ!!」
「ぎゃああああっ!?」
召喚された眼前のパーティーと向き合っていたと思ったレッサーライダーが、突如反転してその背後にいたパーティーの後衛に襲い掛かったり、タンク役に一斉に複数体が攻撃して手が足りなくなった隙に他のレッサーライダーが横を抜けて後衛へ向かったりと、明らかにさっきまでと比べても戦術……というよりもはや戦略の質が一段階上がった、というレベル。個々の戦術も、ウルフが自身をジャンプ台にゴブリンを飛びかからせたり、あえて武器の方に咬み付いて攻撃自体を封じて仲間に襲わせたりと、より狡猾になっている。
そしてライダーキング本体はと言えば、さっきの変な踊りは明らかにゴブリンキングの方が主導権を握ってたけど、どうやら今回はジェネラルウルフの方が主導権を握っているみたいだね。
「ガルッ! ガアウ! グルアァァッ!!」
何やら、誰もいないのにまるでそこに仮想敵がいるかのように、ジェネラルウルフが虚空に向かって咬み付いたり引っ掻いたり避けるようなステップを踏んだり尻尾を叩き付けたりと、武術の演舞でも演じているような動きをしていた。よく見れば、取り巻きの攻撃や撤退のタイミングが明らかにそれに一致して呼応している。ゴブリンキングの方は、その動きに完全に振り回されていて、振り落とされないようにしがみついているのが精一杯って感じだね。
これは……なるほど、レッサーライダーたちを見れば、さっきはバフが二重に強化されていたけど、今回は「統率」のバフが「統制」に強化されているようだ。単に組織的な行動を可能にするだけだったのが「統率」で、「統制」は完全にジェネラルウルフが指揮権を握って全体に直接指示してるって感じなのかな。
「ち、畜生ッ! 抑えきれねぇ!」
「うわああああああっ!?」
「K1、P1班壊滅! 緊急事態につき、バックアップのK1、P1班で戦線を維持してください! バックアップ班の穴は周囲のパーティー同士で各自に対応をお願いします!」
「ちょちょちょっ!? そんなんいきなり言われても!」
「うわぁどっちみち次はこっちに来てんじゃん!?」
「た、助けてくれえぇぇっ!」
マズいね……ついに壊滅したパーティーが出始めた……! このままだと戦線も維持できない……!
なんとかしなきゃだけど、一体どうすれば……!?