note.211 SIDE:G
遠吠えと共にライダーキングのHPが50%まで回復されて、何やら大技が来る予兆だね。
周りのパーティーもみんなで、何が起きてもいいよう身構える。
「――――――!」
ゴブリンキングが雄叫びを上げて杖を振りかざすと、周囲にフォトンの波動が広がって……これは、取り巻きの再召喚……!
「――!」
「――――!」
「バウッ!」
「ガルゥッ!」
波動に乗せられたフォトンが集束して、倒したはずのレッサーライダーたちが復活する。
加えて、
「――、――、―、―、―! ――、――、―、―、―!」
ゴブリンキングが奇妙なステップでウルフを操りつつ、自身も音頭……というか囃子……?……というか、何かよくわからない謎の踊りを踊り始める。
すると、そのステップに合わせて断続的に赤いオーラが発せられて……これは……取り巻きライダーたちにも元々のゴブリンキングの全ステータスバフに加えて個別のステータスバフが加わって二重バフに強化された!? 幸いにも、バフの範囲自体はそんなに広くなくて、再召喚された取り巻きたち以外にまでは拡がってないみたいだけど、取り巻きたちは一度倒されたことでジュエルドミネーターの二重デバフもリセットされてしまっているから、二重バフの強化だけがかかった状態だ。これはマズいね……!
「――――!」
「ガァウッ!」
「ぐわっ!?」
「ヤベェ、こいつらめちゃくちゃ強くなってるじゃねーか!」
ジュエルドミネーターのバフ分の戦力差がすっかり埋められてしまって、またも一転して周りのパーティーたちの戦線が瓦解していく。
あれ? とは言えこれ……ジュエルドミネーター分のバフは埋められてしまったけど、それでもまだリーフィーの加護の二重バフ分のステータス差がある僕たちに限れば、まだ意外と余裕あるね?
「《コンセントレーション》! あはっ、ざんね〜ん♪ そんなんじゃまだまだ足りないよ〜っと! ほいさ〜!」
コンセントレーション――おそらくフルコンセントレイトで無理やりステータスを引き上げたミスティスは、襲い来るレッサーライダーたちを余裕で蹴散らしていく。
後ろのモレナさんたちも、
「そこぉっ!」
飛び込んできたレッサーライダーの、ゴブリンが突き出してきた槍を盾で受け流しつつ、ウルフの側をトリプルステイクで撃破。その側面からもう一匹飛びかかろうとしていたレッサーは、
「《ファイヤーウォール》!」
僕がファイヤーウォールで一旦止めてあげる。続いて、
「ありがとうございます! 《チェインライトニング》っ!」
「わっ……と、こちらこそ、ありがとう」
止められた一匹共々、謡さんがチェインライトニングで僕たち後衛組に来ていた数匹を一掃してしまうと、
「これで!」
本来なら時間差での波状攻撃のつもりだったか、タイミングをズラしてモレナさんに向かった一匹をブラスティックアローでエイフェルさんが撃破する。
そうしている間に、ウルフを撃破されてモレナさんの前に残されたゴブリンも、
「てぇぇやっ! どーよ!」
モレナさんの、ワイドスラッシュを派生させた回転斬り。ただ、その回転は一回で終わらず、軌道を変えて袈裟斬りにして二回目、さらに続けて今度は下から掬い上げるように逆袈裟にもう一回、星印を描くように斬りつける素早い三連撃でフォトンへと還っていく。
ワイドスラッシュからの派生スキルとして公開登録されているオリジナルスキル、スタースラッシュだね。
うん、僕たちだけなら余裕だったね。
だけど、ステータス的に互角に追い付かれている周りのパーティーはやはりそうもいかないようで、
「あっ!」
「ぐは……っ、こんにゃろ!」
「マズい押し込まれる!」
かなり押されてきてしまっている状態だね。
まずはステータス差を埋めている二重バフをどうにかするのがよさそうだね。向こうからすれば戦線が押し込めているチャンスのはずの今も、ライダーキングはこの隙に攻めてくるでもなく変な踊りを続けて赤いオーラを発し続けているから、多分個別ステータスバフはあの変な踊りを止めれば止まるはず……?
「ステラ!」
『ん』
「《サークリングファイヤー》!」
『《ファイヤーピラー》』
サークリングファイヤーで拘束したところへステラにファイヤーピラーを重ねさせて、内と外、二重の火柱で内部を焼き尽くす。
「「――――!?!?」」
うん、これはさすがにかなり効いてるね。中の様子も確認できないぐらいの濃密で激しい炎の奔流に呑まれて、ライダーキングが揃って声にならない悲鳴を上げる。
そして案の定、踊りの効果だったらしい個別ステータスバフはすぐに消滅して、周りのパーティーの人たちもひとまず攻勢に転じられる猶予ぐらいはできたみたいだね。
「おっ? 個別バフ切れたぞ!」
「これならなんとか!」
「でりゃあぃっ!」
さすがに余裕を持って、とはいってなさそうだけど、再召喚された取り巻きの撃破はできたみたいだ。
その頃にはライダーキングはと言えば、
「――!? ――――ーーー〜〜〜!!」
「ガアアアアアァァァァッ!?」
炎上の状態異常にかかってそれぞれ地面を転げ回っていた。
まぁ、こうなればもうこっちのターンだよねぇ。
「よ〜っし、やっちゃえー♪」
なんて吶喊したミスティスに続いて、
「っしゃあ、遅れるな!」
「めんどくせぇことしてくれやがってコンチクショーめ! お返しだオラァ!」
全員でまたフルボッコにしてやれば、結局立ち直る頃には5割まで回復していたHPは再び4割ちょっとぐらいまで削れてしまっていたのだった。
「――――!!」
「ガルアアアアアァァァァッ!」
立ち直ったライダーキングがウルフの咆哮衝撃波で一旦間合いをリセットする。
ここから仕切り直しだね。……と思ったんだけど……
「規定時間が経過しました。当初の作戦通り、戦列の交代を優先するものとし、第一防衛ラインを放棄、第二防衛ラインにて戦線を立て直します!」
「あっちゃ〜、時間切れかぁ」
ジャスミンさんからの指示に、ミスティスが思わずといった様子で残念そうに上空のジャスミンさんを見上げる。
「だぁ〜〜〜チクショウ! 俺はまだやれる!」
「やー、しゃあないっしょ。抑えて抑えて……」
「完全防衛ならず、ね」
「そこはまぁ、そういうもんって最初にも言われてたじゃん。切り替えてこーぜ!」
「だなー。実際、1時間経ってるウチらは疲れたよ……。交代できるなら願ったりだ」
周りのパーティーでも、血気盛んな人たちはちょっと納得いってない部分もあるみたいだけど、元々の前線班だった人たちは実際疲れも出てるみたいだし、この判断は妥当なんだろうね。
「30秒後に上級魔法による支援法撃を行います。総員、撤退の準備を!」
「やっべ、急げ、退け退け!」
ジャスミンさんの予告と共に、戦場全体に次々と上級魔法の攻撃範囲を示す魔法陣が展開されていく。
わぁ……完全に撤退を前提に、容赦なく転移用のストリームスフィアに影響の出ないギリギリまで戦場全域が攻撃範囲にされちゃってるね。
「うっひゃ〜い、逃っげろ逃げろ〜♪」
「どひぇ〜!? 撤退の支援なのに巻き込まれて死ぬなんて本末転倒は御免だよぉーっ!?」
「あっ、待ってくださいモレナ、私も……!」
「っ、《ファイヤーウォール》! わ、私たちも行きましょう、マイスさん!」
「うん! 『《ファイヤーウォール》』!」
こんな時でもどこか楽しそうなミスティスを先頭に、謡さんとステラと一緒にファイヤーウォールを何枚か張って、少しでも敵の進行を魔法の範囲内に足止めしつつ、僕たちもストリームスフィアまで駆け込む。
周りの人たちも、同じようにウォール系魔法や弓手系上位職の一部が使える罠系スキルを中心に、敵を足止めしつつも順調に撤退できているようだ。
僕がストリームスフィアへと飛び込んで、第二防衛ラインへとちょうど転送された辺りで、ジャスミンさんからカウントダウンが告げられる。
「法撃まで10秒、9、8、7、6、5秒前、4、3、2……法撃、起動します!」
今は僕たちの前方となった第一防壁の向こう側で一斉に上級魔法が発動すれば、壁越しにもその閃光が見え隠れして、壁を挟んでいるはずのこちらにまで轟音と振動が伝わってくる。
「法撃終了、全部隊の撤退と規定通りのローテーション進行を確認しました。これより、第一防壁が破られるまでに戦線を立て直します! 各上位個体への対応は引き続き前線班として2班が担当してください。対応パーティーの割り振りも変わりません。C1、G1、L1、R1、W1、A2班で上位個体『ゴブリンライダー』を、ゴブリンライダー対応班を除いたI1からQ1班で最上位個体『キング・オブ・ジェネラルライダー』を対処してください。残りの前線班及びバックアップ班は総員で戦線の維持をお願いします!」
とのことだから、僕たちは変わらずボス戦の続きでいいみたいだね。
「っし、ならいくぜぇっ! 壁崩される前にさっさと詰めるぞ!」
「急げ、俺らも乗り遅れるな!」
と、早速ライダーキング組を中心に、前線班となった僕たち2班のパーティーが次々壁に向けて駆け出していく。
「よ〜っし、うちらもいこー♪」
「うん!」
両剣を掲げたミスティスに頷いて、僕たちも最前線に加わるべく走り出す。
ライダーキングも後半戦だし、何よりここからが僕たちにとっての本来の前線班としての一時間だ。改めて、気合を入れ直していこう。