note.028 SIDE:G

 また少しの間迷路を進んでいくと、次の敵が現れる。

「お、みーつけたー」
「――!!」

 と、いち早く存在に気付いたミスティスの挑発に引き寄せられて、向かって来たのはホブゴブリン。
 ダンジョンの高魔力・高エーテル環境で強化された結果、より人間らしい体格を手に入れた、ゴブリンの上位種族だ。
 大きさや骨格がほぼ人間と同等になっている分、より対人戦に近い対応が必要になっているけど、基本はゴブリンって感じかな。
 ギャーギャー喚いてるだけに聞こえたゴブリンの鳴き声が、ワギャウギャと少しは何か彼らなりの言語っぽくなっているようにも聞こえなくもないけど、まぁ大差はないね。
 ただ、ダンジョン内ということもあってか、普通のゴブリンのような集団行動は少なくなってて、1〜3匹程度の小集団で遭遇することが多いのが普通のゴブリンとの違いみたいだね。
 今回も遭遇したのは1匹だけだった。

 まぁ、骨格が人間っぽくなったとはいえ、所詮は魔物だね。
 挑発によってタゲは完全にミスティスに固定されてしまって、棍棒を振り上げながら真っ直ぐに彼女へと直進して、悠々と盾に受け止められ、弾かれて隙を晒す。

「ほいっと〜」

 弾かれたことで、ほとんど万歳をするような形で大きくのけ反る格好になってしまったホブゴブリンに、お返しとばかりにミスティスが、ピアシングダイブの地上版、魔力を乗せた単発刺突強攻撃スキルのピアシングスラストを叩き込み、あっさりとその身体は貫かれて動きが止まる。
 そして、ミスティスが刃を抜いて軽く後ろに下がれば、すかさず射線の通った僕たちからファイヤーボルトとバーストアローが撃ち込まれて、ホブゴブリンはあえなく爆散していった。

「いーね、カンペキっ!」
「ふむ、まぁこの程度ならわけないな」
「だね」
「順調順調♪」

 蛇に続いて特に危なげもない戦闘結果に、四人それぞれに軽口を交わして陣形を戻す。
 初心者向けダンジョンと言うだけあってか、狭い通路で突然挟み撃ちとかそういうこともないし、出てくる敵もこうして落ち着いて1匹ずつ対処できる感じで、戦いやすくていいね。
 こうやって、パーティーの基礎的な連携がきちんと取れていれば、苦戦することはない場所、という印象だ。

 さてさて、また少し歩を進めると、今度は3匹のホブゴブリンの集団だ。

「――!!」
「――!」
「――、――!」

 剣、槍、短剣と、綺麗に分かれた武器を手にした3匹がこちらに気付いて身構えれば、

「いーね、これぐらいじゃないと!」

 と、待ってましたとばかりにミスティスがすぐさま挑発でタゲを自分に全て引き付ける。
 3匹が一斉にミスティスへと襲いかかるけど、まぁ、後ろにいる僕たちが、むざむざそれをそのまま許すわけがないよね。

「《フロストスパイク》」

 僕の魔力操作に従って、地面から次々に、前方へ弾き返すような方向で氷の巨大な槍が生み出されて、3匹の内、後ろにいた槍と短剣の2匹を巻き込み、お手玉のように弾き飛ばして、その最大射程まで一直線に遠ざける。
 その間に、残った剣の攻撃はミスティスが余裕を持って受け止める。
 そうして、剣持ちとミスティスが幾度か剣戟を交わす間に、氷槍の連なった障壁の脇を抜けて槍持ちがもう一度近づいてこようとするけど、

「《ファイヤーボール》!」

 僕が放ったバスケットボール大の火の玉を腹部にもろに食らって押し返され、さらに消えずに直進してきた火の玉が今度はヒットと同時に爆発、それによって再びノックバックする。

 ファイヤーボールは文字通り、火の玉を発射して相手にぶつける、火属性初級魔法の一つ。
 攻撃力自体は初級魔法相応って感じだけど、今やったように、火の玉本体による衝突と、その後の爆発という2回のノックバック判定を持つ単体攻撃で、爆発部分には衝撃による確率でのバインド効果もついている足止め用のスキルだ。

 今回は、上手いことバインド効果もかかってくれたみたいだね。
 爆発の衝撃にぐらりとよろけて、槍持ちは一度その場に膝を突いてなんとか踏みとどまる。
 まぁ、バインドの効果時間自体は短いから、見た目には本当にただよろけて膝を突いちゃっただけ、みたいな感じですぐにまた立ち上がってこちらに向かってくるんだけど……その一瞬で既に、ミスティスが剣持ちと決着をつけるための時間稼ぎには十分なんだよね。

 人に近い身体を手に入れたとはいえ、剣術も何もなくただ振り回しているだけに等しいようなホブゴブリンの剣を、ミスティスが受けられないはずもなく、振り下ろされた剣を下から盾で受け止めると、そのまま逆袈裟斬りのような切り上げ軌道で盾を跳ね上げ、万歳のような格好でホブゴブリンをのけ反らせる。
 そこにオグ君のチャージング付きのバーストアローが撃ち込まれている間に、その動きを止めることなく拳を振りかぶるように盾を持った腕を引いたミスティスは、そのまま拳でぶん殴るようにして――これが上位職のガーディアンであれば、盾の縁を使って相手を殴る、シールドエッジというスキルが発動していたであろう動きで、がら空きになった剣持ちの鳩尾辺りを思いっきり殴りつける。
 そして、

「悪いけどちょっと実験台になってね〜♪」

 魔力を込めて手元のトリガーを引いた。
 「ガシュッ!」と音を立てて、ウォルフラムシールドの固有スキル、ウルヴズファングが起動。

「――!?」

 飛び出した2本の杭に貫かれて、剣持ちはフォトンへと爆散した。

 その頃になって、ようやく立ち直った槍持ちがこちらに向かってきて、後ろでどうやらフロストスパイクの氷柱の壁を無理やり乗り越えようとしていたらしい短剣持ちも慌ててそのルートを諦めて槍持ちに合流しようとしていたけど……まぁ、もう遅すぎるよね。
 オグ君からチェインアローが放たれて、槍持ちが爆散、複製された矢は短剣持ちの額へと刺さり、その動きを一瞬鈍らせる。
 その一瞬があれば、ミスティスは既に跳躍によって距離を詰めていて、空中で身体を横倒しにした状態でワイドスラッシュを発動。
 マグナムブレイクと並んでメジャーなオリジナルスキル、スピニングブレイドの動きで、縦回転による上空からの連続攻撃を加えていく。
 そこから着地したところで、さらにくるりともう一回転ターンを決めつつ、魔力を剣に纏わせることによる、ソーディアンの一番の基本とも言える強攻撃スキル、バッシュで×字を描くように二連撃。
 短剣持ちも、結局ほとんど何もできないままにフォトンの塵へと還されていった。

「ま、こんなもんかなー」

 と、ミスティスが剣を払って一息つく。
 その姿に、僕はまた内心で拍手を送ってしまっていた。
 なんというか、ミスティスの剣術って、空中での動きがすごく綺麗なんだよねぇ。
 今のスピニングブレイドからの連続攻撃然り、昨日のピアシングダイブ然り、なんというか、思わず見惚れてしまうような流麗さがあるような気がする。
 これは、1stキャラからの経験みたいなものなのかな?
 いつか機会があったら、1stキャラのミスティスの弓での戦い方というのも見てみたいなぁ、と少し興味が湧いてくる。

「ん〜♪ いいねいいね! ウルヴズファング、カッコイイ! そんで強い!」

 当の本人は、ウルヴズファングの実戦での手応えにご満悦のようだ。

「っていうか、あたしたち連携完璧じゃない!?」
「そうだな、今のはほぼ理想的と言ってもよかった」

 と、隣ではちょっとテンションの上がったツキナさんに、オグ君も頷いていた。
 これには僕も同意したいかな。
 一応、今の僕とミスティスのLvから見れば格上と言っていいホブゴブリン3匹に対して、ほとんど何もさせることなく、今の僕でできる最善の動きができたと思う。
 そしてそれが、みんなとも綺麗に噛み合っていた。

 こういうのがあると、パーティープレイって楽しいなぁって素直に思えるよね。
 この調子ならこの先も楽しく進めていけそうだと思うと、自然と笑顔がこぼれていた。
 うん、この先の攻略も頑張ろうっと。


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