note.031 SIDE:G

 青ゴブリンをとにかく射程に捉えられた時点で、僕は即座にブレイズランスを最短で詠唱する。
 エニルムスタッフに持ち替えた今なら、これぐらいは短縮できる!

「穿て紅蓮! 《ブレイズランス》!」

 結果的にそれは、こちらに向き直ってすぐには飛びかからず、その場で威嚇の咆哮を上げた青ゴブリンに対して先手を取ることに成功する。

「!! ――!」

 ブレイズランスの爆風に青ゴブリンがたたらを踏んだその合間に、その正面に対峙したミスティスが少女たちに声をかける。

「みんな、大丈夫!?」
「えっ? は、はい! なんとか!」

 と、一応ギリギリでヒーラーの子が持たせていてくれたのだろう、ツキナさんの支援も加わって、幾分余裕ができた様子の盾役の子が、状況は飲み込みきれていなさそうながらも、しっかりした声で返事をする。

 だけど、その返事を言い終えるか否か、という頃には、立ち直った青ゴブリンは爆炎を突き破るようにミスティスへと突進していた。
 跳躍と共に、その右手に持った、それなりにしっかりした作りの片手剣がミスティスに叩きつけられる。

「ッ! 《エンデュランス》!」

 「ガァンッ!!」と、見た目以上に威力はありそうな音を響かせて、青ゴブリンの剣はミスティスにしっかりと受け止められる。

「――! ――! ――――!!」
「くッ! ちょっ、さすがに重すぎ……!」

 剣術なども特になく、ただただ力任せに叩きつけられるだけながら、フォトンクラスターで強化されたらしい身体能力による強烈な連撃に、ミスティスもエンデュランスを発動した上で耐えるのが精一杯といった様子だ。
 そのせいで、ミスティスと青ゴブリンの間合いが離れず、オグ君も誤射を恐れて攻撃を躊躇っている。
 とにかく、あの連撃を一度止めないと……。

「《ファイヤーボール》!」

 ミスティスとの間を無理やり引き剥がすように、ファイヤーボールを青ゴブリンに差し込む。
 斜め方向からの二度のノックバックによって、青ゴブリンは壁際まで押し出されて、バインド効果も発動してくれたようで、一瞬ながら膝を突く。

「っ、《バーストアロー》ッ!」

 すかさず、射線を確保できたオグ君と、結果的に青ゴブリンの背後を取れる立ち位置になった弓役の子から、ちょうど十字砲火の形でバーストアローがチャージング付きで撃ち込まれる。
 二方向からもろに食らったバーストアローにぐらついた一瞬を狙って、僕もブレイズランスを再度詠唱。

「穿て紅蓮、《ブレイズランス》!」
「《ファイヤーボルト》!」

 考えることは同じだったようで、ほぼ同時のタイミングで、いつの間にかクレリックからマジシャンに切り替わっていた支援役の子からも追撃のファイヤーボルトが飛ぶ。

 それらも続けて全て直撃して、堪らず一声咆哮した青ゴブリン。
 これは誰かにタゲが変わるかと一瞬思ったけど、まだ挑発のタゲ固定効果が続いているのか、赤目から光を靡かせながら、青ゴブリンは僕たちを無視してミスティスに刺突攻撃を仕掛ける。
 ミスティスは、あえてエンデュランスをかけずに、それをしっかりと盾で受けて、そのノックバックを逆に距離を取ることに利用することを選択した。
 刺突を振りきり、身体が完全に伸びきったことで、青ゴブリンに一瞬の隙ができる。

「今のうちぃーっ!」

 その隙を突いて、背後から盾役の子がピアシングスラストで青ゴブリンを貫いた。

「――――!!」
「うぉわっちゃぁ!」

 背後から刺し貫かれて、暴れる青ゴブリンに、慌てて盾役の少女が剣を引き抜いて飛び退ると、今度こそ挑発も時間切れだったのか、青ゴブリンは怒りの形相で彼女の方に向き直って吼える。
 だけど、この状況で彼女たちにタゲを変えるってことは、僕たちに隙を晒すってことなんだよね。

「隙あり、だな」

 オグ君のスナイピングショットの光条が、青ゴブリンの胸元を貫通する。

「《バーストアロー》!」
「《ファイヤーボルト》!」

 背後からの衝撃に、突き飛ばされるように体勢を崩したところに、更に少女たちからの追撃。

「ダメダメ、君の相手は――私だよっ!」

 それと同時のタイミングで、既にミスティスは青ゴブリンの頭上へと跳躍していて――

「!?」

 それに気が付いて、後ろに上空を振り仰いだ青ゴブリンの顔面に、スピニングブレイドの連続攻撃が容赦なく刻まれていく。

「――ーーー〜〜〜!!」

 苦悶の叫びを上げながら、思わず剣を取り落として両手で顔を覆った、その両手ごと青ゴブリンの顔を踏みつけたミスティスは、そのまま青ゴブリンを踏み台にもう一度跳躍。
 そして――

「マァグナムっ……ブ〜レイク〜〜〜♪」

 メテオカッターからイグニッションブレイクの魔力を宿して、垂直落下。

「――――――――!!!」

 通路そのものが吹き飛ぶんじゃないかという程の爆轟と共に、断末魔の叫び声が響き渡り、青ゴブリンは爆散してフォトンへと消えていった。


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