note.063 SIDE:G

「世紀の大発見って? なになに? 教えてくれんのー?」

 思わせぶりな天地さんに、ミスティスが食いついていく。
 こうもったいぶって世紀の大発見とまで言われると、まぁ気にはなるよね。

「ん〜ん、マイスがその装備してるってことは、エニルムは攻略済みか。ならまぁいけるっしょ」
「エニルム? 世紀の大発見……って、まさか!?」

 エニルムという単語と、世紀の大発見と言われて、ミスティスが何か気付いたみたいだね。
 というか、これは僕でも察しがついた。
 エニルムで世紀の大発見なんて言えるような謎と言えば、まぁ、間違いなくアレのことだよね。

「エニルムの碑文!? アレ解読できたの!?」
「おっ、さっすが、察しがいい!」

 エニルムの碑文……エニルムの遺跡のボス部屋の奥の祭壇に刻まれている解読不能のあの碑文だよね。

「うっそ、マジ!? ホントに世紀の大発見だよ!」
「えっ、本当ですか!?」
「ま、正確には『読める言語に翻訳した文章が見つかった』って話なんだけどね。まぁ、これを見てみるがいい」

 そう言って、天地さんが見せてくれたのは、元は本か、何かのメモ書きか……ともかく、1枚の紙面を写したスクリーンショット。
 その上半分にスケッチされているのは確かに、あの祭壇と刻まれた碑文だね。
 そして、その下に書かれているのは……って、これ結局読めないんだけど!?
 ……と思ったら、ミスティスは読めたみたいだね。

「えーっと……?」
「あー、ホントだ! これなら私も読めるよ!」
「んむ、マイスはまだ無理そうかな? まぁ、この言語は言語学のLvを上げてやると読める範疇の言語さね」
「なるほど。それで、なんて書いてあるんです?」
「えーっと、何々? 『汝、(まこと)の試練に臨むなれば、石の炎灯し、守護者の瞳捧げよ』……?」
「守護者の瞳っていうのは、これのことですよね?」

 前回のエニルムの記念品として僕がもらっていた、銅鐸からドロップした丸い石を取り出してみる。
 これを祭壇の上に空いたソケットに嵌めて使うんだろうってところまでは予想がついてたんだったね。

「ま、そうだな」
「でも、石の炎っていうのは……?」
「あー、それもまぁ、なんとな〜く予想はついてんだよな。多分アレだろ、道中のゴーレム倒すとドロップ9割で無駄にボロボロ落ちてくるゴーレムの破片」
「あぁ〜! アレを火の代わりに燭台の上に乗せろってことね!」

 あー……「ゴーレムの破片」って名前で倒すたびにボロボロ落ちるくせに、それ自体は特に使い道もないただの石片でしかないせいで、ギルドでも取り扱いに困るらしいって話で基本的に放置してたあの石の欠片かぁ。

「んぬ、まーそうなんじゃねぇかなーと思ってるんだが、答え合わせはとりあえず行って試してみるしかないな。つーことで、これからちらっとエニルム遺跡まで行くわけだが、どうよ。一緒に来てみるかね?」
「もっちろん! いくいくぅ〜♪」
「いいんですか? 是非行ってみたいです!」
「よろしい、OKだ。ほんじゃまぁ、パーティーはそっちで組んでるんだろうから、うちが入れてもらうとするかな」
「オッケー、送ったよー」
「おぅ、サンクス。そんじゃ、二人ともよろしくぅ」
「よろしくお願いします」
「いぇーい、れっつごーぅ♪」

 まさかの、天地さんとのパーティーかぁ……。
 う〜ん……本人に言ったら多分、気にしなくていいって言ってくれるんだろうけど……やっぱり元々の人見知りも合わさって、ちょっと緊張する……。
 でも、文句なしのトッププレイヤーである天地さんとパーティーが組めるなんて、またとない機会だ。
 さっき翼竜に追われた時には幸先の悪い日だと思ったけど……なかなかどうして、巡り合わせというのはわからないものだね。

 ともあれ、今日の行き先は再びのエニルム遺跡に変更だね。
 一路、東方向へと歩を向ける。

 その道中のこと。
 一つ、聞いてみたいことが浮かんできて、思い切って質問してみた。

「あの、天地さん、一つ聞いてみたいんですけど……」
「ん〜? 何ぞー?」
「どうして、そこまで本気で神器を探そうと思ったんですか?」

 すると、返ってきたのはあまりにもシンプルな答えだった。

「あ〜、それね〜。たま〜に聞かれるんだけど、まぁ簡単な話さ。あった方がカッコイイじゃん」
「へ? あ、あー……まぁ、はい……まぁ、もし神器が本当にあるもので、手に入ったらカッコイイなぁとは思いますけど」
「だろ? まーそれだけよ。別にそんなご大層な理由なんぞないさ、ははっ。言うてぶっちゃけた話、本当にアイテムとして存在してるかどうかってのも、実のところそんなに気にしてないんだよねー」
「えっ? えっと、つまり……?」
「まぁ、ストーリー上あぁまで言われてるわけだからとりあえずどっかになんかしらの形であるにはあるんでしょう、じゃないとゲームとして話進まないわけだし。で、だとすれば、だ。実際のアイテムとしての有無はともかくとしても、『在るもの』として遊んだ方が、まぁ浪漫はあるっしょ。そんでワンチャン本当に手に入ったらそれこそ最高にカッコイイじゃん?」
「なるほど、確かに浪漫はありますね」
「まーやっぱレア掘りはMMOの華だもんね〜」
「そう言っちゃうともう身も蓋もねぇな」
「あははっ」

 まぁ、一言でまとめちゃえばミスティスの言う通りなんだけど……なるほど、「あった方がカッコイイ」かぁ……。
 実際のアイテムとしての存在は別にしても、「神器は存在しているという設定」の下に立ってこの世界を遊んでいる……考えようによっては、これもある種のロールプレイとも言えるのかもしれないね。
 ともあれ、「あった方がカッコイイ」……うん、このシンプルな理由には共感できるものがあるね。

「神器かぁ……」
「おっ、興味が出たかね? 少年」
「あー、はい、ちょっとだけ……。まぁ、伝説の武器を見つけ出して世界を救う勇者……なんて、男の子なら一度は憧れる王道ファンタジーってやつですしね」
「ですよねー。うむ、よきよき。ま、気が向いたら探してみるといいさ。案外と、その気になって探すとそれっぽい感じの話は結構すぐ出てくるから」
「そうそう、それっぽそーな話はいろいろ転がってるんだよね〜。ド定番だと選ばれし者しか抜けない剣とか、ドラゴンが護る財宝とか」
「それは多分ちゃうやろーってやつになると、どこぞの貴族の没落の原因になった呪われた剣が残された呪いの館とか、どこぞに難破船の財宝が沈んでるとかあったな」
「あはは……話の段階からもうだいぶピンキリですね」
「だろー? この辺の話集めるだけでも結構面白いんだよな。そしてこの世界ならそれを実際冒険できるから最高に面白いんだ。……つってもまぁ、言うてとっかかりもなしにただ探せってのも酷な話だからねぇ。まずはユークスの大図書館がやっぱり、情報収集の定番じゃないすかね。王都の図書館なだけあって、あそこでちょろっと歴史書なりなんなり漁るだけでも結構それっぽい伝承みたいなのはいくらでも出てくるぜ」
「そうだねぇ。私たちのLv的にも、そろそろ王都のストリームスフィアは開通しておいてもいいかもだし、一度王都まで行くのはアリだね! よーし、明日オグとツキナが帰ってきたら、次は王都までいこ〜!」
「うん、行ってみようか!」

 王都ユークス――現在実装されているフィールドである、この世界に残された最後の砦、小国ユクリの王都だね。
 アミリアからは北西に位置する、今となってはこの世界随一の大都市だ。
 なるほど、ユクリは本来のこの世界からすれば一介の小国とはいえ、曲がりなりにも王都の図書館ともなれば、かなりの情報が集まっていそうだね。
 確かに、神器への足掛かりとなる伝承やらを漁るにはうってつけだろう。

「っとー、そろそろ遺跡が見えてきたぜ」
「オッケーオッケー、パパっとツリガネ君ぶっ飛ばして、碑文の謎を解き明かそ〜♪」
「うん!」

 さてさて、本当に解読通り「真の試練」なんてものが用意されているなら、まだ誰も足を踏み入れたことのない「3F」に僕たちが初めて到達するということになるわけだけど……どんな試練が待っているのやら……。
 なんだかドキドキしてきたね。


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