note.076 SIDE:G

 フォトンが渦を巻いて、虹色の球体に収束していく。
 今回のMVPは……ミスティスだね。
 与ダメージの量は多分僕の方が上だったと思うけど、MVP選定のスコア計算は被ダメージ量も関わるみたいだから、連続ブレイズランスを全弾盾で受けたり、全体横薙ぎを受け止めたりした分でかなりスコアを稼いでいたということらしい。

「んぉ……MVP私かー」
「だね、おめでとう」
「いぇあーおめ〜」

 大の字に寝たまま首だけ上に向けてフォトンクラスターを見上げたミスティスは、コロンと寝返ると、てちてちと四つん這いに進んで、ぺたりとクラスターの前に座る。

「んしょ……そんじゃも〜らい〜」

 頭より少し上ぐらいに浮くクラスターに座り込んだまま見上げるように手を伸ばせば、触れた右手にフォトンが集まっていく。
 形になったのは……骸骨が使っていたものそのままを人間サイズに縮めた剣だね。
 ソードゴーレムや、ミスティスが普段使ってる剣より大振りで、両手剣っぽいけど、ギリギリ片手でも扱えるかな?ぐらいの大きさ。
 所謂バスタードソードって感じかな。

「おぉー。えーっと、スカルゴーレム・バスタード……だって。バスタードソード(バッソ)かー、重心バランスちょっと変わるから使いにくいんだよねー。もー、こんなとこまでリアルにしなくていいのに……。あ、これもゴーレムなんだ……統合制御機能?って、なんだろ?」

 試しにと立ち上がったミスティスが骸骨剣を浮かせると、ソードゴーレムの方もひとりでに鞘から抜けて浮き上がる。
 すると、

「お、おぉぉ? おぉ〜、なるほどなるほど。あはっ♪ すごいすごい!」

 すぐに何かを理解したようで、人差し指で指揮棒を振るようにして二振りの剣をすいすいと操ってみせる。

「おぉぅ、なんだ、突然ニュータイプに覚醒でもしたか? いくらソードゴーレムったって、二本同時によーやるな」
「それがねー、骸骨の剣で、手持ちのゴーレム系装備をまとめて制御できるんだって! 骸骨の方に大まかにイメージを伝えてあげるだけでソードゴーレムの方も勝手に動かしてくれるの! ほらほら見て見て!」

 はしゃぐミスティスは、くねくねと二つを互い違いに交差させてみたり、柄同士を向かい合わせて両剣のようなフォーメーションでくるくると回転させてみたり、二つ交互に前方を斬り払いながら進ませてみたりと、二本の剣を自在に操ってみせた。

「おぉ……これはすごい」
「なるほどのぅ。攻撃力が足りる間ならめちゃくちゃ使えそうじゃん」
「でしょ〜? これはいいものが手に入ったよー♪」

 満足したらしいミスティスが鞘を差し出すように前に向けると、骸骨剣が勝手に元通り収まり、腰元の鞘にもソードゴーレムが同じように自動で戻って収まった。

「これいいねぇ〜。うん、こうしとこっと♪」

 と、ミスティスはまるで日本刀の打刀と脇差のようにして、ソードゴーレムを提げた左腰に骸骨剣も新しく提げる。

 そうして一段落ついたところで、

「んで、骸骨が言ってた秘宝とやらってこのMVP報酬のことってことでいいのかな?」

 ミスティスがふと辺りを見回して――全員の目が一ヵ所に留まる。
 奥の棺が……なんか光ってる?
 何やら棺の全体に刻まれた紋章刻印と装飾が、淡くゆっくりと明滅を繰り返している。

「アレって多分、開けろってことだよねぇ?」
「……だと思うけど……」
「まぁどう見てもそうじゃろなぁ」
「でもアレさぁ。どう見ても棺じゃんね。開けたら死体が入ってるとかない?」
「……」

 ミスティスの予想に、なんとも言えずに思わず棺を凝視してしまう。

「まぁ、あんなあからさまに主張してるんだしとりあえずは開けてみてから考えるんでもいいんじゃないすかね」
「だね〜。んじゃ開けてみよー」
「うん」

 というわけで、ひとまずは棺の前へ。
 発光を繰り返す棺に、ミスティスが恐る恐る触れると、

「わっ!?」

 棺の装飾のいくつかがガチャガチャと動いたかと思えば、一枚岩の板だと思っていた棺の蓋が縦に割れて、ゆっくりと両側に開いていく。
 蓋が開ききり、その中に収められていたのは、骸骨……ではなく、何やら装備品のようだった。

「よかったぁ、死体が入ってるとかじゃなくて」
「だね。あはは」
「鎧一式と……? また玉か……」

 鎧の方は一式と言っても、プレートアーマーみたいな全身鎧とかじゃなくて、胸当てと籠手、簡易的な腰鎧と、脛当てのセットという感じの軽鎧の一揃いで、今ミスティスが付けているものに近い感じだね。
 それから……またさっきのスペラーみたいな赤い玉が、今度は3つ……。

 と、ひとまず中身を検めたところで、

「わぁ!?」

 鎧の方は一式全部が突然眩い光に包まれたかと思うと、一つの光の玉になって、ミスティスの身体へと吸い込まれてしまう。

「えっ、な、何!? あー……なるほどね〜。これ初回MVP特典のユニークレアだってさ」
「おぉ、なるほどな、おめ〜」
「それはおめでとう」
「おめあり〜♪」

 初回特典……ゲーム内で初めて見つかったボスの初撃破のMVPの専用報酬ってことかな。
 となると、これが軽鎧だったのもフォトンクラスターと同じく、ある程度MVPの獲得者であるミスティスの傾向に合わせてかもしれないね。

 早速ミスティスが装備ウィンドウから換装する。
 まぁ、見た目には多少さっきまでより装飾とかが豪華になったかな?ってぐらいで、それほど全体の印象は変わらない感じだね。

「えーっと……破壊不能付きかぁ。ま、ユニークとは言ってもこの辺のLv帯からのドロップだから、あんまり派手な効果はついてないか〜。……ん? と思ったら、なんだろ、セット効果が……エクストラスキル《空間認識》Lv1? んん? んー……? あ、あぁー……あぁね〜」

 何やら一度目を閉じたミスティスが、何か納得したようにうんうんと頷く。

「えっと、どういうスキルなの?」
「あー、うん、あのね、こう、スキルをオンにすると、縦横高さ1メートルごとに空間にグリッド線が引かれて、距離感がすっごい見やすくなるの! すごいすごい!」
「ははぁ。ユニーク装備もゴーレムの遠隔操作補助用ってわけか」
「そういうことかな〜」

 エクストラスキル空間認識……僕もどうにかスキルを手に入れられれば、多少は魔導書も操作できたりするのかな?
 ちょっと興味はあるし、あとで調べてみようかな。

「んーで、後はこの玉か。どうにもゴーレムコアスペラー(さっき)と同じにしか見えないが……」

 まぁ、3つあるってことは一人一つずつなのかな、ってことで、それぞれに玉を手に取る。
 えーっと、アイテム説明は……?

「ほぅ?」
「えっ?」
「これって……!」
「ゴーレムコア……ゴーレムの核そのもの!?」
「こりゃまた、なるほど秘宝だな」

 隠し部屋からの装備品みたいに武器に組み込まれたりしてるわけじゃない、本当に単なるゴーレムの核……。
 説明文は……最も基本的なゴーレムのコア。対応するフレームに組み込むことで初歩的なゴーレムを作成可能。と……つまり……

「これって、身体を用意してやれば、自分用のゴーレムが作れるってこと……?」
「ってことじゃないすかね」
「だとしたら、面白そう!」

 自分専用のゴーレムかぁ。
 少なくとも、今までのこのゲーム(HXT)には存在しなかったシステムだ。
 身体はどうやって用意するのか、そもそもそんなことが本当にできるのか、この核の使い方をまずは探らなきゃいけなさそうだけど、かなり夢のある話だね。
 ミスティスのはしゃぎっぷりもわかる。

「よぅし、こりゃ早速帰って使い方を探さないとな!」
「ですね」
「だね〜。この部屋もこれ以上はもうなさそうだし、帰ろ〜」

 ということで、銅鐸の部屋と同様に部屋の入口に設置されていた転送魔法陣を起動して、僕たちは地上へと帰還した。


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