note.178 SIDE:G
翌日、今日もいつも通りに4人集合だね。
「今日は何する〜?」
「う〜ん……」
「ま、特にないなら適当に適正な狩場でマイスとミスティスのレベリングでいんじゃない?」
「そだね〜」
とまぁ、今の僕たちでちょうどいい場所を思い出そうとして。
「ふむ、ならば、せっかく採取道具も一式揃えたんだ、少し使ってみないか?」
とのオグ君の提案。
「使うって、どこで?」
「キングたちの店を案内されたなら、そろそろ魔晶鉄鉱が欲しくなってくる頃合いじゃないか?」
「あ〜」
「あそこね〜」
魔晶鉄鉱と聞いて、ミスティスたちはもう行き先の察しがついたみたいだね。こうしてパーティーを組むようになってから急速にLvが上がったおかげで、そろそろ情報サイトを流し読みした程度の知識じゃ追い付かなくなってきてて、行き先はもう正直わからない。
確か、低Lv向けから上級者向けまで、数ヵ所採取地があるらしいところまではなんとなく読んだけど、流し読みすぎて具体的な地名とかはさっぱりだ。
「あそこって?」
「アヤクラ隘道さ。王都から北に向かった、山脈を抜ける谷合の道だな。両端の麓にあるアヤムの町とクラッツの町を繋ぐ道だからそのままアヤクラ隘道だ」
「なるほど」
あー……ちょっとだけ思い出したかも。確か、昔は魔物が跋扈する領域だったところを冒険者が切り拓いたことで整備された道で、その功績の褒章として街道周辺は冒険者による自由採掘が認められている場所、みたいな話だった気がする。
「あそこなら確かに、Lvも150ぐらいでちょうどいいし、魔晶鉄鉱も取れて装備もちょうど買い替え時だし、いろいろピッタリでしょ」
「そういえば、Lv150ぐらいになったら複合杖を見繕ってあげるってミィナさんも言ってたっけ」
「そーなんだ。じゃあなおさらピッタリじゃん」
Lv150はミィナさんに複合杖への買い替えをオススメされたボーダーラインだね。街道でレベリングしてLv150を目指しつつ、魔晶鉄鉱の確保もできれば、ミィナさんに杖を作ってもらって、それを即座に強化した状態で使えるってわけだね。
「うん、それなら今日はそこに行ってみたいな」
「決まりだな」
「おっけー」
「おー!」
今日の行き先は決定だね。
「なら、まずは王都か。マイスと、それからミスティスもそっちのキャラでは初めてだろう。今日のところはアヤムまでは馬車だな」
「うん、わかった」
「そーね」
「りょーかーい」
というわけで、まずは王都の中央へ飛んでから、北口で乗合馬車の定期便に乗る。
「わぁ……馬車ってそういえば初めてだ」
「あー、マイスはそうだよね〜。ただでさえこういう時でもないと冒険者って移動は基本徒歩かストリームスフィアだし」
例によって勝手に納得したように頷くミスティス。
「たまにこうやって乗る分には馬車って好きなのよね〜。なんかこー、旅してるぅ〜!って感じ?」
「乗り心地はお世辞にもいいとは言い難いがな。フ、まぁそれもまた旅の味か」
とはツキナさんとオグ君の言。
気持ちはわかるかなぁ。この乗り心地の悪さも含めて、旅の醍醐味とでもいうか……なんというか、ファンタジー世界を実感させてくれる感じがワクワクするよね。
そんな会話も交わしつつ、さすがに終盤はちょっと景色にも飽きてだれてきたところもあったけど、ひとまずアヤムの町に到着する。ここまで大体1時間半か2時間かかったかなぐらい?
「とぅっちゃ〜く!」
「んんー……っはぁ、着いたわね〜」
ミスティスは元気よく飛び降りて、ツキナさんは大きく伸びをして、女子二人が馬車を降りる。
……は、いいんだけど、その……
「くぁ……お、お尻が痛いんだけど……言うほど長い時間ってわけでもなかったのに……」
「乗り慣れていないとそんなものだろうな。ククッ、ま、それも含めて馬車旅というものさ」
なんて、僕の後ろから降りたオグ君には笑って流されたけど、これを毎回はちょっとヤダなぁ……。あぁは言うけど、慣れればなんとかなるものなのこれ……?
ともあれ……到着したアヤムの町は、まぁ見るからに宿場町って感じだね。全体的に宿と厩舎と酒場、それからやっぱり、魔晶鉄鉱を産出する山道の麓というだけあってか、鍛冶屋らしき店が多いように見える。規模で言えば町というよりは村と呼んでも差し支えない小さな町ではあるけど、元々冒険者が開拓した町だからか、僕たちのような採掘自由の魔晶鉄鉱目当ての冒険者が多いからか、ストリームスフィアはしっかり設置されていた。
実際、町の規模に比べて、冒険者らしき人が多いように感じる。後はやっぱり、王都から山脈を超えたカルヌ地方側に抜けるには最短ルートということもあって、行商人と彼らのものらしい馬車も多いように見えるね。
まぁ、まずはストリームスフィアを登録しようか。後で忘れてまた次回馬車も御免だしね。
登録を済ませたら、お昼と呼ぶには少し早すぎるけど、町のお店で腹ごしらえ。まぁ整備された谷合の道とはいえ、これから山越えだし、体力はつけておいて損はないしね。さすが、場所柄冒険者向けの店ということなのか、バフ付きの料理だったし、味も普通に美味しいの範疇でまとまってたから、思ったよりは当たりの店だったね。
さて、料理バフももらって、準備も万端かな。
「よしゃー、出発しよー!」
と、いつも通りなミスティスのハイテンションに答えて。
「行こうか、ステラ、リーフィー」
「ん」『任せて欲しい』
「えぇ、いきましょう」
いざ、アヤクラ隘道だね。