note.209 SIDE:G
さぁ、僕たちバックアップ班の出番、ここからボス戦だね。
「はああぁぁぁぁぁーーーっ!」
ミスティスがウォークライの雄叫びと共に、マグナムブレイクで一足飛びにボスのキング・オブ・ジェネラルライダーの元まで飛び込みつつ、取り巻きを一息に吹き飛ばしにかかる。
けど……バフのせいか、思ったよりも敵が減ってない……! マズい、これミスティスが囲まれる!
「《ファイヤーウォール》!」
「《フレアボム》!」
僕がファイヤーウォール、謡さんがフレアボムで、とりあえずウォークライでタゲを引いてしまった取り巻きの残りを足止めする。
しかし、これも倒しきるには至っていない。思った以上にバフがかなり厄介だね……戦線が崩壊しかかるわけだよ。
「てやあぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ほいさっ」
ファイヤーウォールで足止めされてちょうど直線状にならんだ数体を、モレナさんがウォークライでタゲを取り直しつつ、ピアシングスラストにウェイブエッジを乗せて直線上に貫通刺突攻撃を放つ合わせ技、ロングインパルスでまとめて貫き、フレアボムでたたらを踏まされた奴らはミスティスが走り高跳びの背面跳びの要領で身体を横倒しにしての縦回転二連、その回転のままに着地して横回転二連の四連撃、クロッシングスイープで斬り捨てる。
その隙を突くつもりだったらしいライダーキングはと言えば、
「おぉっとぉ、抜け駆けはさせないぜっ!」
「りゃああぁっ!」
「ひゃっはー! ボコせボコせー!」
追いついてきた他のパーティーにすっかり囲まれてボコボコにされていた。
ふぅ……これで一旦なんとかなったかな。とりあえず、雑魚のメインタゲをモレナさんが引いてエイフェルさんたちと僕でそれを援護、その前でミスティスが雑魚を間引きしつつ大物に専念する僕たちの基本陣形に持っていくことはできた。
でも、全体の戦況はまだ全然劣勢だ。バックアップ班も総動員してなんとか今は拮抗してるってところかな……。
「きゃあっ!?」
「ぐぁ!」
「ごめん、そっちまで手が回らない!」
「えいクソ、もっと撃て撃てぇっ!」
軽く耳を傾けるだけでも周りのパーティーの苦戦が伝わってくる。
そして実際、僕たちにも思ったより余裕がない。
「――!」
「――!」
「っ……! こっ、ん! なのぉッ!」
レッサーライダー二匹からのモレナさんへの同時攻撃。片方はしっかり対応して盾で受け止めて、カウンターにバッシュを乗せた突きを入れてゴブリンを仕留めたけど、完全にタイミングを合わせられた右からのもう片方はどうしようもなく、槍の一撃が鎧に刺さり、下のウルフが太ももに咬み付く。それでも、モレナさんは臆せず、渾身の気合で刺突で刺さった剣をワイドスラッシュを発動させて無理やり振り抜いて、もう片方のゴブリンも両断する。
「放しなさいっ!」
その動作に振り回されつつも、口を開けずに脚を咬み千切らんとしていた残りのウルフを、エイフェルさんがバーストアローで仕留める。
すぐさま謡さんからモレナさんにヒールが飛んで、傷自体はほぼかすり傷ぐらいまで一瞬で治されたんだけど、
「あっ……!」
「きゃっ……!」
その隙を突いて、唯一残っていた正面側のゴブリンを失ったウルフがエイフェルさんへと飛びかかる。
「《ファイヤーボール》!」
その爪がエイフェルさんに届くかという直前、僕のファイヤーボールが脇腹からウルフを捉えて突き飛ばし、2ヒット目で爆発、フォトンへと爆散させる。間一髪、なんとか間に合った……!
こっちも危うかったけど、ミスティスたちライダーキングに対応してる方もかなり苦しい状況で、
「とゃ〜〜〜っ!」
他パーティーの人たちと一緒に、包囲するようにライダーキングに飛びかかった、次の瞬間、
「ガァウッ!」
「わひゃっ!?」
ジェネラルウルフが小さく跳躍すると、勢いをつけて四足で着地して衝撃波を起こす。距離が近かったミスティスや数名が衝撃波で強制的に距離を開けられて、距離が離れていた他の人たちも地面の振動で足並みを崩された。
そこに、ゴブリンキングがウルフを操って嘶かせると、
「――! ――! ――――!!」
何かの詠唱と共に頭上高く掲げた杖を振り回し、ウルフの前足が降りると同時にその勢いに乗せて横薙ぎに杖を振り払う。
と、ライダーキングを囲んでいた全員に対して一発ずつの火の玉が発射される。見た目ファイヤーボールに似てるかな?とも思ったんだけど、
「ヘン、そんなへなちょこ……ぎゃああああっ!?」
「あがあああああっ熱いっ! 熱いいぃぃ!」
「くっ、これじゃ近づけない……!」
どうも違うものだったらしい。爆発よりも炎上の状態異常がメインみたいだね。盾で受けてしまった人たちが軒並み火だるまにされて転げ回る。かと言って、回避を選択したらしたで今度は着弾地点で燃え広がって、ライダーキングに近づくのが難しくなってしまっている。結構厄介なスキルだねこれ……!
けれど、そんな中でも唯一、
「わっちゃ……なんてね〜、残念っ♪」
「――!?」
スピニングパリィのパリィ判定を乗せたウォルフラムシールドで受け止めたミスティスだけは火の玉を完全に掻き消して、即座に反撃のダブルバッシュを叩き込んでいた。
そう言えば、元々ウォルフラムシールドには火属性耐性60%がついてたんだったね。その上でパリィ判定で受ければ、この程度は防ぎきれるってことだね。
「《ピュアリファイ》、《ヒール》!」
「ぁつつつつ……ふぅ、助かった! ありがとな!」
とりあえず燃えちゃった人たちは状態異常解除のプリーストスキル、ピュアリファイですぐに治してはもらえてるみたいだね。
とは言え……この統率バフで不利になってる状況を打破しないことには戦線は押されていくばかりだ。
これは……正直切り札だと思ってたから、もう少し後に取っておきたかった気持ちもあるし、今の状況で効果範囲がどこまで及ぶのかぶっつけ本番なところもあるけど、もう出し惜しみをしてる場合じゃない!
「ステラ!」
『ん』
「《召喚:ジュエルドミネーター》!」
スキル宣言と同時に、僕の……というよりはステラの書の上の空中に、巨大な魔法陣が縦向きに展開される。そしてそこから、ジュエルイーターの巨大な頭が首を擡げて現れる。
それと同時に、体内の魔力がほとんど全部一気に抜き取られる感覚……! うっ……この、立ちくらみを起こしたみたいな、イヤ〜な感じの頭のふわふわ感……。立ちくらみと違って視界ははっきりしたままだけど、なんというか、精神的な喪失感がごそっと襲ってくるこの感じ……結構キッツいなぁ……。思い出すのは、転職の時に言われた、基本職の時点ではオーブで身体にリミッターがかけられていたって話。なるほど、MPの9割を一度に使ってこれだから、限界を超えて無茶するのは生命の危険って話も納得だよ……。
ともかく、すぐにアイテムショートカットから虎の子のMPハイポーションを叩いて失ったMPをほぼ全回復まで回復させる。
……うん、もう大丈夫。
「うわぁ!? 今度はなんだってんだ!?」
「アイアンイーター!? 一体どこから!?」
「いや待て、なんかちげぇぞ!?」
「とりあえずなんかやべぇっ!」
まぁ、周りは敵も味方も大混乱だよねぇ……あはは……。味方はもちろん、ライダーキングや周りのレッサーライダーたちまでも、ジュエルイーターの異様な威圧感に気圧されて動きを止めてしまっている。まぁ、ウルフゴブリンたちからすればこれが本物だったらLv的に自分たちよりも倍ぐらい格上の相手だもんね、無理もないか。
「えっ、えっ、えぇっ!?」
「うえぇっ!?」
「わ、わゎっ……マ、マイスさん!? 一体何を呼んだんですかっ!?」
あー……エイフェルさんたちは混乱する側だよねぇ、あははー……。
「おー、これはソーカンだねぇ」
なんて、既に知ってるミスティスは暢気に額に手を翳して見上げてるけど。
「いやぁ、話すと長くなるんだけどね……。ジュエルイーターっていう、アイアンイーターのレア種なんだ」
「な、なんだか色々すごいものと契約してるんですね……」
「ねぇ、いい加減マイスってアタシたちと同じLvなんだよね……?」
「え、僕そこから疑われるの? あ、あれぇ?」
「だって、喋れる魔導書さんに妖精さんにMVPボスのレアバージョンなんて……普通にやってたらまず絶対出逢いませんよ!」
謡さんのツッコミに二人も首を縦に振る。
あー、いや、その、うん、それを言われると正直反論はできない自覚がある……。敵にしろ味方にしろ僕のレアキャラ遭遇率ってやっぱりおかしいよねぇ?
と、そんな話をしている間にも、「ズズズ……」と効果音が付きそうな動作で、ついにジュエルイーターが完全に姿を現す。
「シュルゥ……シャアアアアアァァァァァァアアッ!!」
舌を出しつつ、ゆらりと戦場を一つ睥睨したジュエルイーターは、雄叫びを上げるかのように全身をくねらせて、身に纏った全ての宝石を光らせると、赤青緑の三色のオーラを戦場全体へと広げる。
……戦場全体!? このスタンピードの戦場全部いけちゃうの!? 割と想定以上の効果だよ! そりゃあ今の全MPの9割を注ぎ込んだだけのことはあるよね……。
オーラを放ったジュエルイーターは、その姿勢のまま動画を一時停止したみたいに固まって、フォトンへと還っていった。
「わあぁぁぁあ!? ……あ、あれ……?」
「うわあ今度は何……えっ?」
奇しくもライダーキングが放ったのと似たような赤と青のオーラで混乱しかけた戦場だったけど、みんなすぐ効果に気が付いたみたいだね。
「なんかすんげぇバフが来たぞ!」
「見て、敵にもデバフが!」
「うおおおお! これは熱いぜ!」
「あぁ〜、リジェネが助かるー!」
「誰だか知らんがありがとー!」
劣勢だった味方も一気に士気が上がったのが空気感でも伝わってくる。
「うっわ、全ステバフと個別バフで二重バフ、おまけにリジェネまで!?」
「敵は逆に二重のデバフがかかってます」
「しかもこれ、リーフィーさんの加護とも別枠なんですね」
その効果にエイフェルさんたちも驚いている。
そうなんだよね、この二重バフはリーフィーの加護とも別枠だから、僕たちに限れば既にかかっているリーフィーの同等の二重バフと合わせて四重の全ステータスバフがかけられた状態になっている。これにおまけでリジェネ効果付き。そして敵には逆に二重デバフでライダーキングの全ステータス上昇を相殺した上で全ステータスが下がった状態にまで追い込んでいる。
ここまでバフデバフを重ね掛けすればさすがに余裕も出てくるというもので、
「ははっ、さっきまでとダンチで敵が遅ぇぜぇ!」
「っと、見えてんだよ! オラァッ!」
「っしゃ、押し返すぞーっ!」
押し込まれ気味だった戦線を押し戻す余裕が生まれてきているみたいだね。
周りのみんなでそんな感じなんだから、四重バフのかかった僕たちともなると更に効果は絶大で――
「――!」
「――……!?」
「ふっふ〜んだ、もうその手は……食わないかんね!」
またもタイミングを合わせてのレッサーライダー二匹からの同時攻撃だったけど、モレナさんはさっきとは見違えるような動きで正面に捉えた一匹の飛びかかりを右に軸をズラして回避して見せると、回り込んだ左側面から大上段のバッシュでゴブリンとウルフ共々一刀両断、遮蔽になっていた一匹がフォトンに還ったことでがら空きになった二匹目の側面へ、ピアシングスラストからのトリプルステイクの合わせ技、クアッドピアーシングを叩き込んでまとめて撃破してしまう。
その後ろでも、本来であればモレナさんを襲った二匹に連携して後ろから襲う算段だったのだろう、エイフェルさんと謡さんの背後からそれぞれ一匹ずつレッサーライダーが迫っていたんだけど、
「そこです!」
「《ブレイズランス》!」
お互いにお互いの背後にいた敵を交差して狙う形で、エイフェルさんからバーストアロー、謡さんからブレイズランスが飛んで、双方ともきっちり一撃でフォトンへと爆散させる。
――さっきまでなら謡さんの支援ありきで被弾しながらも強引に対処していた連携攻撃も、難なく退けられていた。
これなら――
「マイスさん、これなら取り巻きの対処は私たちだけでもできると思います。ここは私たちに任せて、ミスティスさんの援護に行ってあげてくれませんか?」
「大丈夫、こっちは任せていいよ〜!」
謡さんとモレナさんからの提案に、エイフェルさんも頷く。
――うん、僕もちょうど同じことを考えていた。今の状態なら僕がいなくても、元々の三人の連携で十分レッサーライダーには対応できそうだもんね。
「わかった! 三人とも、よろしくね!」
「「はいっ!」」
「オッケー!」
レッサーライダーをエイフェルさんたちに任せて、最前線でライダーキングと対峙するミスティスの下に向かうことにする。
ここから僕は本格的にボス戦ってわけだね。この後にはまだティッサ森の虫たちも控えているのに、こんなところで苦戦はしていられない。みんなと一緒に、まずはライダーキングを片付けようか。